二期情報がでまわ(以下略
戦後妄想
人外設定です。その上いろいろ設定捏造してますごめんなさい。
死にネタでもあるので、苦手な方はご注意下さい。
あと兄貴がちょと情けないかもしれませんどうしよう・・・ごめんなさい・・・
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彼らに対する町の住民の評価は、仲睦まじい年老いた祖父とその孫であった。2年前にこの町に越してきた彼らは、日曜の礼拝には欠かさず出席していたが平日はあまり町を出歩く様子はなかった。時折緩やかな歩調ではあるがしっかりとした足取りの背の高い老人と、オレンジの球体を腕に抱く少年が買い物がてら散歩をしているのを見ることがあるだけだ。穏やかな光を碧の瞳に蓄えた老人は公園のベンチに腰掛けて休憩がてら少年に色々な話をし、生真面目な表情で耳を傾ける少年は腕の中の球体に話しかける。人工AIを搭載されてあるマスコットロボなのだろう。老人と少年の声に反応してやや甲高い合成音を返していた。返答次第では老人が老いを感じさせない朗らかな声で笑い、少年が頬を綻ばせる。住民とって彼らのその様子はとても好ましく、願わくば長くその光景が見られることを望んでいたから、運良く彼らの散歩にかち合ったときには挨拶と共にその日の糧を「おすそわけ」したり収穫したばかりの作物を振る舞ったり、日曜日には老人が移動しやすいよう礼拝堂の座席に心ばかりの工夫を施し、気づいた老人の茶目っ気たっぷりのウィンクに心を和ませた。もちろん彼らも住民の好意に対してささやかながらお返しを忘れなかった。世界中を旅して来たらしい老人は尋ねてくるやんちゃな子ども達だけでなく、町から出たことの無い若者にとってまだ見ぬ世界の案内人であったし、少年は球体ロボと共に町を歩きまわって住民宅に設置してある情報端末の不具合を修正したり、プログラムの更新を行ったりしていた。年頃の少年同士にとって通過儀礼と言っても良い取っ組み合いが発生した場合は仲裁役を依頼されて現場へ向かい、見事役目を果たして帰宅した後憮然とした顔で頬に付着した泥を落とすのが常だった。
夕食をすませて揺り椅子に腰掛けた老人は、少年が食器を片付ける際に生じるささやかな音に耳を傾け随分と上手くなったと評価した。食器は丁寧に扱うようにと長年行って来た指導は実を結んだようで、その結果に満足する。宇宙空間での生活が長かった少年は重力下での力加減が上手くなかったので、こちらが飛び上がるかという位の大きな音を発生させては首を傾げていることが多かった。やはり月日というものは流れていくのだと感じる。彼らが共に過ごして来た時間は長く、表面上は全く変化が見られない少年に対して自分は随分と年を取った。揺り椅子の上でゆっくりと体の動きを確認するのが、ここ数年彼が夕食後に行って来た習慣である。長年鍛えてきたこともあるが、体内に注入されてあるナノマシンによって加齢による筋力の低下はある程度は抑えられているために、己の意思で行動することができた。ただ、昔のように思うがままには動かない。意識とその反応の差に苦心したが、緊急性のある介助は必要がないというのは有り難かった。この技術を断りも無く体に適用された時は愕然としたが、今思えばパイロットに掛ける保証としては格別であったのだろうと思う。兵器よりもそれを利用する人間の教育時間を考えれば、おいそれと粗末に扱えないということだ。彼らが世界の敵として活動していたのは半世紀以上も前になるが、ナノマシンの寿命が途切れたようには感じない。定期的に少年が相棒を使って検査・メンテナンスをしているようだった。モビルスーツを降りてからというもの、オレンジの相棒は少年によって随分とカスタマイズされ、旧式然とした外見からは想像もつかない高性能を誇る。もちろん、現役(?)パイロットとして活躍していた時から性能の高さに変わりはないが、引退後には戦闘に特化していたプログラムに修正が加えられたのだ。少年は特に医療関係に関してプログラムの修正を行っており、それはすべて今ここで揺り椅子を動かす老人の為だった。
物思いに沈んでいた彼は、片付けを終えたらしい少年が目の前に立っていることに気づく。にっこりと微笑んで労いの言葉をかけた後、少年に向けて腕をのばした。のばした腕を取って膝に乗ってくる少年を抱きしめる。町の住民が自分達をどう評価しているのかは知っている。仲の良い祖父と孫。尋ねてくる住民達が口を重ねて少年の賢さ、健気さを褒め、彼はその言葉に対して礼を述べてきた。だが、彼らが今自分達を見ればその考えは間違いであることに気づくはず。膝にあがった少年は彼の首に腕を回して口づけを強請り、応えて頬に軽く触れると不満げな顔で体を揺らす。喉を鳴らすように笑ってから望む所に唇を落とし、ゆっくりとその味を堪能した。かつては日々の不安定さに目を背けるかのように性急に求め合ったものだが、二人の間に流れた歳月はその焦燥のかわりに穏やかに触れ合う喜びを培った。己の腕の中で陶然とする体をあやしながら、これは恋人同士の睦みあいだろうと思う。事実その通りだった。
所属していた組織に与えられた任務を完遂したその日、彼は少年の今後一切を望んだ。当然ながら組織の申し子として作られ、育てられた少年は、自分が人間とは異なるのだと承知していたから彼の望みを受け入れることを拒絶した。自分はあなた達と違う、一緒には行けないという彼を宥めて抱きしめて人間だのは関係ない、ただ側にいてくれと願った。一度は己の復讐心から少年のもとを去ったが為に、少年に彼に対する不信感を僅かながらも植え付けたことを百も承知で少年を手放せなかったのだ。もう一度機会を得る僥倖を取りすがってでも逃すつもりは無かった。そして、どうあろうとも少年が彼を拒める訳が無いと根拠の無い自信があった。(少年は彼を愛している!)ひどい男だと思う。最終的に絆された少年が頷いて二人の生活が始まる。人間をまねて作られたのだという少年の外見は人として完璧でありながら、内部は悉く異物だった。歳月を重ねても成長の兆候どころか老化の気配すら無い、彼が表情や体に年齢を重ねて行くのに対して少年は時を留めるかのようだった。そのことに気がついた彼は、数年おきに土地を変え名前を変えて少年を連れ歩いた。モビルスーツに搭乗していた時には気がつかなかったが、世界は広く名前を変えて歩き続ける二人を隠し通してくれた。彼が少年を愛し続けるのに全く条件などなかったが、少年が彼を愛し続けてくれるのかは自信が無かった。老化に伴って変わって行く自分を見て戸惑いとほんの少しの恐れを抱いていることに気がついていたが、恐ろしくて尋ねることが出来なかった。自身の年少期を含む過去そのものが彼を臆病にさせていた。そのくせに自分が少年にしたことは何だったのかと己を嗤ったが、少年が彼のもとを去る夢を見てはいっそのこと、と思い詰めた事もある。そんな日々が続き不眠から酒量が増えたある日、少年は酒瓶をひったくって代わりに彼の相棒を己に差し出し言ったのだ。あなたの体調に関しては、今後一切僕が管理します、反論は認めない、僕の体は人間とは違うから予想は立てられないけれど、ハロがナノマシンから得た情報を僕にくれる、そのようにプログラムし直しました、これからは勝手なことさせませんからそのつもりで。一息でまくしたてた後、僕の心がそんなに信じられませんか、人間じゃないからですかと泣きながら言った。人間だのそうでないのと気にしていたのは自分だったのだと悟った彼は、同じように泣きながら少年を抱きしめ謝罪し、少年の腕の中にいるハロに一つの命令を下した。そうして二人は、本当に愛し合う事が出来た。
暖かな体を抱きしめたままで永久に眠りに付けたらと思う。恐れは常に彼の側にあった。だがそれは今ではない。時計を見てそろそろ寝ようと少年を促し寝室へ向かう。明日もまた、少年を感じながら目覚める事ができれば良いと彼は思った。
季節が変わる頃、少年が喧嘩の仲裁を果たして帰宅した際にいつもは出迎えてくれる穏やかな声が聞こえなかった。そのかわり、何度も己の名を呼び続けるハロの声がきこえる。いつも彼が座っている揺り椅子が置いてある部屋に駆け込み、相変わらず彼がそこにいるのを確認して、足下で名前を連呼するハロを撫でると、マシン、ハンノウ、カクニン、デキナイ、と返した。ナノマシンの反応が返ってこないという。少年が彼の顔を覗き込んで名前を呼ぶと、彼は静かに目を開けて来たるべき日が来たよと返した。二人の間では何度も話し合いが持たれた件だ。こまめに少年がメンテナンスを心がけて来たが、耐用年数というものがある。いくら技術が進んでも、こればかりはモノである以上逃れられない問題だった。揺り椅子に座らせたままでは気の毒だからと少年は彼を寝室へ運んだ。いつもなら彼に介助は必要ないのに、全身で少年を頼る彼の体に力は感じられない。抱きしめる体の暖かさが変わらないのは救いだった。横たわり大きく息を吐いた彼は、笑顔を浮かべて礼を言い、その日から少年は必要に駆られない限り外部との接触を断ち、彼の側にあり続けた。彼は眠りを覚醒を繰り返しながら、日々を過ごし少年は覚醒した彼と色々な話をした。昔の事、今の事。そしてこれからの事。彼は何かあったら神父のところへ行くように少年に伝え、少年は了承した。それからは彼の意識は混濁し始めた。寝言のように呟かれる色々な言葉を少年は一つも漏らさないようにし、記憶に留めるよう勤めた。かあさん、エイミー、腕は落ちていないようだ、ミッションコンプリート、とうさん、ライル、俺の
そうしていくつかの夜を越えたある日の明け方、意識が戻った彼は枕元で寝息を立てている少年を見つめた。不思議なもので、少年はすぐに目を開いた。どうしようもなく嬉しくなって、
ティエリア
と彼は言った。
ティエリア、愛しているよ
少年は応えた。
あなたを愛してる、ロックオン
最後に交わした会話はやはり愛に溢れていた。彼は微笑みながら少年を見つめ、そして全身の力を抜いた。恐れは常に彼の側にあった。だがもう何も怖くなかった。
彼に言われた通りに礼拝堂へ赴いた少年は、全て了解していた神父から彼が自分亡き後の一切をまかされていた事を知った。彼が日曜の礼拝を欠かさなかったのは神父に己の姿を見せる為であったこと。少年が一人で尋ねてくる日があれば、それは己がもう動けない状態にあるはずなので、万事よろしく頼むと資金などを預かっていたという。葬儀の日は霧雨の降る日だった。住民は一人残された少年を想い涙にくれ、幾人かは行く所がないのならと声をかけてさえくれた。少年は感謝の意を示しながらもどの誘いも断り、埋葬までを見送った。やがて住民の間に日常が戻って言った頃、二人にとって終の住処となった家の鍵をかけて、少年は扉に向かって頭を下げた。ここに滞在したのは3年程であったが、住民には快くしてもらい、過ごしやすい日々だった。荷物は何も無い。もとから土地を変えつつ生きて来た少年に必要なものと言えば今腕に抱えている球体と、ここにはいない彼だけだった。悩んだが家の鍵は礼拝堂の、彼の席に置いておく事にした。もう少年には必要のないものであったから。礼拝堂を出て、少年は石碑の並ぶ土地へ歩いていた。名前を探すまでもなく、彼の居場所はわかる。石碑を撫でてから、やはり自分は彼の側にいることが最も自然なのだと確信した。答えを出してしまえばとても穏やかな気持ちになって(「彼」はそういう表現するのだと少年に教えた)少年は目を閉じることにした。恐らく他の人間たちには驚かれ面倒をかけることになるだろうが、それはもう彼にとっては関係のないことであり、雑事はあの神父が万事旨く計らってくれるだろう。
さて、少年の力の抜けた腕から転がり落ちた球体は、数回少年の名を呼びかけた後反応が消えていることを確認した。彼(便宜上、彼という)に最後に託されたミッションは滞りなく遂行された。すなわち、彼に対しての上位命令者二名、どちらかが活動反応が消失した場合は、もう一人が反応消失するまで常に傍にあること。ミッションの終了条件は2人ともに反応が確認されなくなったそのとき、彼に蓄積されていた情報をすべて廃棄、彼自身も機能停止すること。彼は何度かカメラアイを点滅させた後、終了シークエンスを実行した。
夕食をすませて揺り椅子に腰掛けた老人は、少年が食器を片付ける際に生じるささやかな音に耳を傾け随分と上手くなったと評価した。食器は丁寧に扱うようにと長年行って来た指導は実を結んだようで、その結果に満足する。宇宙空間での生活が長かった少年は重力下での力加減が上手くなかったので、こちらが飛び上がるかという位の大きな音を発生させては首を傾げていることが多かった。やはり月日というものは流れていくのだと感じる。彼らが共に過ごして来た時間は長く、表面上は全く変化が見られない少年に対して自分は随分と年を取った。揺り椅子の上でゆっくりと体の動きを確認するのが、ここ数年彼が夕食後に行って来た習慣である。長年鍛えてきたこともあるが、体内に注入されてあるナノマシンによって加齢による筋力の低下はある程度は抑えられているために、己の意思で行動することができた。ただ、昔のように思うがままには動かない。意識とその反応の差に苦心したが、緊急性のある介助は必要がないというのは有り難かった。この技術を断りも無く体に適用された時は愕然としたが、今思えばパイロットに掛ける保証としては格別であったのだろうと思う。兵器よりもそれを利用する人間の教育時間を考えれば、おいそれと粗末に扱えないということだ。彼らが世界の敵として活動していたのは半世紀以上も前になるが、ナノマシンの寿命が途切れたようには感じない。定期的に少年が相棒を使って検査・メンテナンスをしているようだった。モビルスーツを降りてからというもの、オレンジの相棒は少年によって随分とカスタマイズされ、旧式然とした外見からは想像もつかない高性能を誇る。もちろん、現役(?)パイロットとして活躍していた時から性能の高さに変わりはないが、引退後には戦闘に特化していたプログラムに修正が加えられたのだ。少年は特に医療関係に関してプログラムの修正を行っており、それはすべて今ここで揺り椅子を動かす老人の為だった。
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季節が変わる頃、少年が喧嘩の仲裁を果たして帰宅した際にいつもは出迎えてくれる穏やかな声が聞こえなかった。そのかわり、何度も己の名を呼び続けるハロの声がきこえる。いつも彼が座っている揺り椅子が置いてある部屋に駆け込み、相変わらず彼がそこにいるのを確認して、足下で名前を連呼するハロを撫でると、マシン、ハンノウ、カクニン、デキナイ、と返した。ナノマシンの反応が返ってこないという。少年が彼の顔を覗き込んで名前を呼ぶと、彼は静かに目を開けて来たるべき日が来たよと返した。二人の間では何度も話し合いが持たれた件だ。こまめに少年がメンテナンスを心がけて来たが、耐用年数というものがある。いくら技術が進んでも、こればかりはモノである以上逃れられない問題だった。揺り椅子に座らせたままでは気の毒だからと少年は彼を寝室へ運んだ。いつもなら彼に介助は必要ないのに、全身で少年を頼る彼の体に力は感じられない。抱きしめる体の暖かさが変わらないのは救いだった。横たわり大きく息を吐いた彼は、笑顔を浮かべて礼を言い、その日から少年は必要に駆られない限り外部との接触を断ち、彼の側にあり続けた。彼は眠りを覚醒を繰り返しながら、日々を過ごし少年は覚醒した彼と色々な話をした。昔の事、今の事。そしてこれからの事。彼は何かあったら神父のところへ行くように少年に伝え、少年は了承した。それからは彼の意識は混濁し始めた。寝言のように呟かれる色々な言葉を少年は一つも漏らさないようにし、記憶に留めるよう勤めた。かあさん、エイミー、腕は落ちていないようだ、ミッションコンプリート、とうさん、ライル、俺の
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ティエリア
と彼は言った。
ティエリア、愛しているよ
少年は応えた。
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