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なんかテレビ見てたらいきなり浮かんだ。
映画だったと思う。<え

あの子がいない世界を生きる狙撃手の生活。
短い話です。
例のごとく捏造で暗い話<いやだなオイ
いやもう本当にすみません……

+ + + + + + + + + +
 目が覚める。
 まずはじめにすることは、横に転がっている相棒に目覚めの挨拶をすることだ。ころころと動き回りながらのオハヨウオハヨウという返事に答え、顔を洗いに行く。それが済んだら食事だ。今の勤め先は体力勝負だから、目覚めて一番の食事はおろそかに出来ない。スクランブルとしっかり焼いたベーコン、この前試食してはまったラズベリーのジャムにトースト。それからサラダ。熱い紅茶を入れてテーブルに着く。手元の端末を操作しながら今日のスケジュールを確認して、ざっとニュースカテゴリに目を通す。世界情勢なぞどうでもいいのだが、話しかけてくる内容には答えてやらなければならない。人の入れ替わりが激しいぶん、人間関係は円満に。仲良くしたい訳ではないが、居心地が悪いというのも業腹だから。かつて所属していた組織でも常に心がけていた。それなりの量がある食事をゆっくり時間をかけて平らげると出勤の時間だ。食事の時は静かにしておくように言ってある相棒が時間を教えてくれる。あと30分。食器を洗い棚に置いてから、身支度を調える。鏡を覗いてしばらくそのままでいる。別に自分の顔が見たい訳じゃない。そっと右目に触れて確認する。俺に残されたのはこれだけだったから。必死で探して、たった一つ。せめて画像ファイルでもあればと思うが、あの子の情報は徹底的に管理されていて、俺の拙い知識では奪い取ることさえ出来なかった。目を閉じる。出かける5分前まであの子を思い出すための時間。時折感情がセーブできずに握った拳を傷つけることもあるが、概ね冷静に居られる。以前に比べれば随分耐えられるようになった。一度部屋をめちゃくちゃにしてかつての同僚に殴られてから落ち着いたように感じる。相棒が時間をもう一度知らせてくれる。仕事に行かねばならない。部屋の扉を開けて一度室内を振り返り相棒に留守番を頼むと、マカサレテ!という返事が聞こえた。車に乗り込んでエンジンを動かす。職場までは20分ほどで到着する。ヘッドライトをつけ人気の少ない道を進み、とある会社の駐車場へ。俺の仕事は夜間警備だ。この地区はガラの悪い連中が多いため、終業後に結構な数の警備員を雇っている。何も起こらない日なぞないと言って良いほど連中との小競り合いが起こるので、それなりに腕の立つ人間が多い。厄介な仕事だとぼやく今日の相方をなだめつつ視線を走らせ、警戒を怠らない。時には俺でも無傷では済まない日もあるが、連中の相手をしていれば余計な事は考えずに済む。この仕事が比較的長く続いているのはそのせいだろう。休憩時間に相方が話しかけてくる。今度の休日をどう過ごすか、家族はいるのか。早くまっとうな時間に勤められる職場に変わりたい。俺はそうは思わないが、あえて否定することもないので頷くだけに留めた。休日に出かけないかと誘われたが、日中は外に出ないと告げて柔らかく断ると殆どの人間は俺の顔を見て何故か得心したように了解する。まぁその目じゃ面倒なんだろうが、若いのにそう達観するなよと言われて思わず腰に下げてある物に手が伸びかけた。気は短くなったように思うが、職場を失うと後が面倒なので堪えた。そうして休憩時間が終わり、再び勤務に就く。相方は機会が有ればまた誘うと言った。
 
 勤務を終えて家路につく。空は少し明るんできていた。帰らなければ。食事に誘われたが、それも断る。帰らなければ。申し訳ないという表情を作るのは慣れた。すぐに部屋に戻りたかった。変わった奴だと思われようが別にかまわない。扉を開けて部屋に飛び込むと、相棒が室内の明かりと点してオカエリと言ってくれる。抱えて軽くなで、ただいまと返すとカメラアイを点滅させて留守中にメッセージがあったことを伝えてきた。窓が完全に遮光されているのを確認し、相棒にメッセージを再生させるとかつての同僚からだった。今は遠く中東域にて生活している彼は、時折メッセージを寄越してくる。俺にかまうまえに自分のパートナーと上手くやれと思うのだが、約束したとかで義理堅くもこうして様子を伺ってくるのだ。もう誰とも会いたくない、何もしたくない。そう思っていた時期がある。いっそのこと死んだってかまやしなかった。でもあの子が生きて欲しいと言うから。俺は鏡を見るたびに思い留まる。俺の目。赤と緑。ふっと息を吐いてから返信をする。文面はいつも同じだ。「問題は何もない」。そして食事の用意を始めた。冷蔵庫の中身はまだ補充せずとも良さそうだ。今度の休みで買い物をする時に必要な物、そしてそれを売っている店を確認しておかねばならない。俺は日中は外に出ない。それで生活できるのかと問われたが、夜間に及ぶ仕事の求人は途絶えることはないし、割も良い。深夜営業の店も多いから買い物には困らないし、暇なときは端末から映画プログラムをダウンロードしたり、車で出かけたって良い。ネットワークを使い本を頼む事も可能だ。もちろん、日用品も。支払いは口座から引き落とされるから預金が無くならないように働けば良いだけだ。太陽を見なくても生きていける。エネルギーだけ利用して、俺は太陽を拒絶する。俺は忘れていない。世界がどうなろうと俺の生活は変わらない。日が落ちる頃に目覚め、夜明けと共に眠りに就く。どこのファンタジーだと笑われてもかまわない。許すものか。絶対に、許すものか。俺からあの子を奪った奴ら、あの子を利用した奴ら、あの子を犠牲にしてできた世界なぞ、くそくらえだ。

 俺の全ては太陽に奪われた。
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