書き始めたのは二期終了前だったんですがね……
なんかこう、遅れまして今更感がたっぷりなんですけども。
2期戦後。だと思う。(え)
暗い話だと思いますが、救いを持たせたつもりなんです。
ニールと小鳥。
短い話です。
なんかこう、遅れまして今更感がたっぷりなんですけども。
2期戦後。だと思う。(え)
暗い話だと思いますが、救いを持たせたつもりなんです。
ニールと小鳥。
短い話です。
+ + + + + + + + + +
ニール・ディランディは歩いていた。
とても暗く、長く、終わりの見えない道であった。時間の感覚はない。惰性で足を運んでいるというだけで、既に己の意志をもって歩いているとは言い難かった。
終わってみれば(終わったのだろうと思う)己の激情や拘りやそんなものが、急に失せてしまったようだった。制し咎められ、それを振り切ってまで突き進んだ思いは、こうも簡単に消えてしまうものなのだろうか。穏やかさとは全く違う感覚を抱きながら、道を歩いている。
この道にいつ来たのか、どこから来たのか、なぜ来たのか、先はあるのか、ニール・ディランディは考えることを随分と前にやめていた。時間というものが放棄された空間で、「随分と前」がどの程度かすら分からないが、これが報いだと思えば彼にとっては最早どうでも良いことだった。
ただ歩く。
辛うじて半径1メートル程は視認できる。とはいえ、何もないのだが。ただただ進行方向へ向かって道が続いているのみだ。目を閉じれば方向すら分からなくなるのだろうと可笑しくなった。
視線の先、黒に塗りつぶされた空間。
今までは目を凝らしても闇で何もありはしなかった。
そのはずだった。
「? 何だ?」
何も無い空間に、急に穴が開いたように見える。何の前触れも無く、唐突に。ニール・ディランディの視線よりやや上、軽く顔を上げて見やすい程度の高さ。穴が開いた空間に、ぼうやりと光が見えた。
深紅かと思えば薄いピンクになったり、かと思えば濃紫と色合いを変える光。ふと、唐突に、とある人物を思い出して小さく呟くと応えるように光は形を変えた。
羽ばたく羽根。小鳥だった。
「……来ちゃったのか」
小鳥は小さく鳴いて、ニールの差し出した手のひらに収まった。包み込むように両手で覆うと、わずかな隙間から顔を出し紅い瞳をニールに向けた。小さいのに暖かい。紫色の羽毛は手の平に心地よく、彼はここで初めて、己が既にグローブを外していたのだということに気がついた。
呆然としたニールに向かって、小鳥はもう一度鳴く。
「……馬鹿だなぁ。なんで来ちゃったんだ……」
ぽつりとつぶやくと、小鳥はその小さな嘴でニールの手を突いた。痛いとニールが言っても小鳥は止めない。
「痛い、痛ぇよ! 何だよ、ちょ…… 怒ってるのか?」
小鳥は返事の代わりにもう一度手を突いてぴぃ、と声を上げた。憤慨しているように見えて思わず笑みを漏らすと、そこでまた声を上げて嘴を突きだした。
「痛いって! ……悪かった。ごめん。色々、悪かったから、」
小鳥は止めない。
そのくせに傷を付けまいと本気で突いてはいないのが分かる。行動に隠された優しく暖かい感覚を見つけたニール・ディランディは、言いたくて言えなかった、ずっと胸に留めていた言葉を口にした。
「……謝るから」
「だから」
「ずっと側に、居てくれよ」
口にしてしまうと力が抜けて、その場に蹲った。
暖かくて柔らかい小鳥を手に包み込んだまま大きく息を吐くと、小鳥は首を傾けてニールの様子を伺う。それから、身体を抜き出して、ニールの手の甲から飛び跳ねるように腕を伝って肩まで上り、また手の甲まで下りてをくり返す。
足の固い爪の感覚に擽られてニールは笑い、小鳥はニールの肩の上に移動し髪を啄んで引っ張る。立ち上がれと促しているようだった。
「わかったよ、行こう。……一緒にいてくれるんだろ?」
高く澄んだ声が響き、ニール・ディランディは足を踏み出した。
長く、終りの見えない道である。時間の感覚はない。
ただ、もう暗くは無かった。
とても暗く、長く、終わりの見えない道であった。時間の感覚はない。惰性で足を運んでいるというだけで、既に己の意志をもって歩いているとは言い難かった。
終わってみれば(終わったのだろうと思う)己の激情や拘りやそんなものが、急に失せてしまったようだった。制し咎められ、それを振り切ってまで突き進んだ思いは、こうも簡単に消えてしまうものなのだろうか。穏やかさとは全く違う感覚を抱きながら、道を歩いている。
この道にいつ来たのか、どこから来たのか、なぜ来たのか、先はあるのか、ニール・ディランディは考えることを随分と前にやめていた。時間というものが放棄された空間で、「随分と前」がどの程度かすら分からないが、これが報いだと思えば彼にとっては最早どうでも良いことだった。
ただ歩く。
辛うじて半径1メートル程は視認できる。とはいえ、何もないのだが。ただただ進行方向へ向かって道が続いているのみだ。目を閉じれば方向すら分からなくなるのだろうと可笑しくなった。
視線の先、黒に塗りつぶされた空間。
今までは目を凝らしても闇で何もありはしなかった。
そのはずだった。
「? 何だ?」
何も無い空間に、急に穴が開いたように見える。何の前触れも無く、唐突に。ニール・ディランディの視線よりやや上、軽く顔を上げて見やすい程度の高さ。穴が開いた空間に、ぼうやりと光が見えた。
深紅かと思えば薄いピンクになったり、かと思えば濃紫と色合いを変える光。ふと、唐突に、とある人物を思い出して小さく呟くと応えるように光は形を変えた。
羽ばたく羽根。小鳥だった。
「……来ちゃったのか」
小鳥は小さく鳴いて、ニールの差し出した手のひらに収まった。包み込むように両手で覆うと、わずかな隙間から顔を出し紅い瞳をニールに向けた。小さいのに暖かい。紫色の羽毛は手の平に心地よく、彼はここで初めて、己が既にグローブを外していたのだということに気がついた。
呆然としたニールに向かって、小鳥はもう一度鳴く。
「……馬鹿だなぁ。なんで来ちゃったんだ……」
ぽつりとつぶやくと、小鳥はその小さな嘴でニールの手を突いた。痛いとニールが言っても小鳥は止めない。
「痛い、痛ぇよ! 何だよ、ちょ…… 怒ってるのか?」
小鳥は返事の代わりにもう一度手を突いてぴぃ、と声を上げた。憤慨しているように見えて思わず笑みを漏らすと、そこでまた声を上げて嘴を突きだした。
「痛いって! ……悪かった。ごめん。色々、悪かったから、」
小鳥は止めない。
そのくせに傷を付けまいと本気で突いてはいないのが分かる。行動に隠された優しく暖かい感覚を見つけたニール・ディランディは、言いたくて言えなかった、ずっと胸に留めていた言葉を口にした。
「……謝るから」
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足の固い爪の感覚に擽られてニールは笑い、小鳥はニールの肩の上に移動し髪を啄んで引っ張る。立ち上がれと促しているようだった。
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