「ロックオン・ストラトス」お誕生日おめでとう。
……って理由で書き始めたんですけど、大幅に遅れましてもう何がなんだか。
ええとまたしても捏造満載です。MSとか。装備とか。戦闘とか。流してくださいまし……
ごめんなさい;;
ってか、これ祝ってるかな(えー)
……って理由で書き始めたんですけど、大幅に遅れましてもう何がなんだか。
ええとまたしても捏造満載です。MSとか。装備とか。戦闘とか。流してくださいまし……
ごめんなさい;;
ってか、これ祝ってるかな(えー)
+ + + + + + + + + +
ティエリア・アーデが「その日」を知ったのは、偶然の重なりによるものであった。本人としては不本意だったかもしれないが、「その日」についてアピールされられたせいでもある。
アレルヤ・ハプティズムは戦術予報士の強引さに苦笑しながらも、己自身が事の発端であったこと、さらに体験済みであったが為に協力を惜しまないと宣言した。刹那・F・セイエイはほぼ巻き込まれたという形であったが、強制的に告白させられたいずれ訪れる「その日」に得られる権利を約束され、興味はないものの断れば後が面倒なことが予想されたため了承した。
「その日」が訪れることを認識はしたが、「その意味」を理解していなかったティエリア・アーデは秘匿義務に反する行為をこと楽しげに行っている同僚達に不快感を覚え一切の協力を言外にて拒絶した。もとより、誰もティエリア・アーデにそれを期待しているわけではなかったので、そのまま良しとされ、ティエリアは煩わしい想いを抱えつつもシフトに定められた行動をそのまま行っていた。
起床後、朝食を終えてプトレマイオスの通路を移動していたティエリアは、5日ぶりにクリスティナ・シエラとフェルト・グレイスの姿を見た。彼女たちは乗務員規定に基づき休暇に赴いており、その間の艦内オペレーションはティエリアが担当していたのだが、昨晩戻ってきたのなら本日より通常ルーチンに戻るはずだ。これから行われるミーティングでその旨指示されるだろう。
ブリーフィングルームの前に至り漸くティエリアに気が付いた二人は、休暇中にティエリアが業務担当していたことを知っていたので、簡単に引き継ぎを行うことを約束して入室していった。遅れて入室したティエリアは、既に待機していた他のメンバーと「朝の挨拶」を交わし(言いように難ありではあるが)姿勢を固定する。
戦術予報士のスメラギ・李・ノリエガが入室してからミーティングが始まる。通常シフト通りであれば30分ほどで終了するので、その間ティエリアは己の報告義務事項を述べれば発言を求められない限り沈黙しているのが常であった。ミッションプランが提示されれば意見を述べるが、本日、明日と介入行動を行う予定はないという。きな臭い地域が現れ始めているが、今朝のミーティングにおいてスメラギ・李・ノリエガはミッションの可能性を示唆するのみで終わった。
ティエリア個人に関わる事項としては、予定通りクリスティナとフェルトが帰還したため本日1030以降オペレーション業務を外れ、通常ルーチンに戻るようにとの指示である。了解を伝えてからクリスティナに視線を向けると、彼女は申し送りよろしくね、と言葉を返してきた。
「ティエリアはどうするの?」
「何をです」
彼女たちの不在時に起こったあらかたの事項を伝え、継続中の調査事項などを引き継いでから手にした端末を閉じたティエリアは、一言述べて席を立とうとしたがその前に掛けられた声に動きを止めた。何の話だと言葉を発したクリスティナを見やると、彼女は唯でさえ緩み気味であるのに(かなりティエリアの主観が入っている)さらにその表情を緩ませて誕生日よ! と言った。隣ではフェルトが頷いている。
「一体何の話ですか」
「……忘れたの?」
「俺に言っているのか?」
信じられないと言い放ち立ち上がったクリスティナは、その小さな体を大きく見せるかのように腰に手を当て、ティエリアを見下ろした。いつもと逆だなと思ったが、口には出さなかった。だが「忘れる」という事項については訂正を要求したい。ティエリアにはありえないことだ。口に出そうとすると、下で買ってきたわという言葉にさえぎられた。クリスティナとフェルトを見ながら、一体何の話なのか理解できずにいると、プレゼントよ! といわれた。
「……だから、何の話だと聞いている」
さっぱり理解できない。優秀なオペレーターであることは認めるが、こうも理解不能な話を繰り出すのは問題があるのではないかとヴェーダに申告すべきだろうか。そもそも1030より通常ルーチンに戻るのだ、しかもあと5分しかない。これからオペレーション業務で滞っていたシミュレーションプログラムにおいて、ステージ4のスコアを上げたいと考えていたティエリアにとって理解しがたい会話が苦痛だった。
「誕生日なのよ、ロックオンの!」
そう言われてからティエリアは先日よりクルーが生年月日の件について議論していたという記憶を呼び出した。そしてマイスター以下、当艦に乗り合わせているクルー全員に秘匿義務があるというのに率先して放棄するとは何事かとあきれ返ったのだった。もちろんティエリアにはそのような愚かな行為に賛同するつもりもいわれもなかったので、誕生日にはプレゼントを渡すだの、喜ばれるものを探すのがよいのだの、無駄なおしゃべりには付き合っていられないとばかりに無言で部屋を退出した。丁度、時間になったのもある。
シミュレーションプログラムは各機にインストールされてあるが、他にシミュレーターがブリーフィングルーム横の一室に設置されている。これは各マイスターの他に操舵を担当するリヒテンダール・ツェーリや砲撃手のラッセ・アイオンも利用しており、つまりは操舵、砲雷関係のシミュレーターでもあるわけだ。時折、ティエリア以外のマイスターらとつるんで大騒ぎしているのを幾度か見かけたことがある。
とはいえ、マイスター達が主にシミュレーションを行うのは各機に搭乗してのことなので、ティエリアもパイロットスーツに着替えるためにコンテナへ向かう。その途中、珍しくパイロットスーツのままで飲料用ボトルのストローを口にしながら何かを考え込んでいるらしいロックオン・ストラトスと遭遇した。通路で呆けている(ようにティエリアには見えた)様子が珍しく、しかも気配には聡い男がティエリアの接近にも関わらず何のリアクションも起こさない様子が気になって足を止めてしまった。
「ロックオン・ストラトス」
「おぉ」
声を掛ければ返事はする。それだけだ。明らかに心ここにあらずといった感じでボトルの中身を飲み込んでいる。考え事をしていると隠しもせずにいるのもまた珍しい。あまりそういう態度を人前では見せない男だ。
「何かありましたか」
「あ?」
「何か懸案事項でも」
あるのですか、と続けたティエリアにロックオン・ストラトスはようやく視線を向けたが、その顔が浮かべている表情は何とも表現しがたいものであった。ティエリアはそう感じたが、スメラギ・李・ノリエガあたりが見ればまた違う所感を述べたであろう。すなわち「意外な奴に思いもよらぬ言葉を掛けられた」というものである。
そういう表情を隠しもしなかったロックオンだが、あいにくティエリアは「表情を読み取る」という能力を割り振ってはいなかったので、軽く首をかしげる程度に反応を返した。
う、とか、ぐ、とかいう声を漏らしたロックオンは口を押さえ天井だか壁だかに視線をやって何かを呟いていたが(畜生なんだ可愛いじゃねえかよ)、やがて落ち着いたのかようやっとティエリアに向き合い口を開く。
「ちょっとシミュレーションで詰まってなぁ…… もうちょっと上手くやれそうなんだが」
返答に時間が掛かった割にはそこまで重大な案件ではなさそうに感じたが、シミュレーションのステージスコアはヴェーダにも報告されるので、ロックオンが重要視するのも当然である。
「どのステージです」
そう返したティエリアに対し、今度こそロックオンは唖然とした表情を堂々と晒してボトルから手を離してしまったのだった。
ロックオンの選択しているステージは3、人革連領内インドシナ海域にて反太陽光発電を掲げる過激派グループの戦闘行為に介入するというものだ。テロリストの攻撃対象は人革連所属の輸送船舶3隻、またそれらに1隻が付き、船舶護衛目的にある程度の武装をしている。テロリスト側の戦力は人革連が払いおろしたMAシュウェザァイが1機、他にMSアンフ、ヘリオンがそれぞれ2機ずつ。MS輸送艦として1隻確認されているという設定だ。
戦力比としては圧倒的にこちらが上になるのだが、水中戦用のMAが配備されていることもあり、戦い方にコツがいるステージだ。水中戦専用の機体はガンダムには無く、各機パイロットは自身の機体を対応して運用する必要があるため、近接戦闘に特化しているエクシアと高起動戦闘に特化したキュリオスでは急速接近、一撃離脱の戦法を多く採用しているとヴェーダへ報告されている。
パイロットスーツに着替えたティエリアはロックオンと共にコンテナへ移動し、許可を得てからデュナメスのコクピットに乗り込んだ。シートの奥にロックオンが移動し、ティエリアはシートに腰掛けてシミュレーションプログラムを立ち上げる。
「武器の選択は?」
「通常装備だろうが。着装武装はGNライフル、ピストル、ミサイル……」
「通常通りでなら間違いはない。だが、このステージではデュナメスにもう一つ装備が選択できることに気がついていましたか?」
「……なんだって?」
ティエリアはコントロールパネルに触れてカーソルを動かし、使用武器選択画面一番最後の項目に『DG014』と表示される装備を示した。ロックオンの目が丸くなる。
「なんだ?」
「対水中狙撃専用の装備です。GN魚雷を発射する。このステージにのみ選択が可能になっていて、デュナメス本体が水中戦闘を行うわけではないが精度の落ちる水中への狙撃に対応した装備だ」
「見たことねぇぞ」
「デュナメスへの実装はまだ先だ。これからのミッション次第では使用することもある」
ステージを開始したティエリアは、ミッションパートナーであるエクシアを先行させ、海上にて展開しているMSに対して攻撃を指示。デュナメスはエクシアが追い込んでいくポイントに対して射撃を開始する。エクシアとデュナメスがミッションを組む場合は最も多く用いられる戦法だ。
「このステージで一番厄介なのはやはりシュウェザァイだ。ビーム兵装では水中での攻撃力が当然落ちる。ヴァーチェでは大出力での砲撃によってその点を強引にカバーできるが、精度を重視したライフルではそれも難しい」
「連射してもな」
「GNピストルではさらに能力が落ちる。あなたの腕でも撃墜までにかなりの時間を割かれるだろう。海上展開の機体に対してはそう手間取らないだろうが、シュウェザァイの水中機動力でもって攪乱されると面倒なことになる」
海上展開したMS全てに撃墜サインが出たころ、シュウェザァイより攻撃を受けた輸送艦が1隻航行不能となっていた。ロックオンは苦々しい表情で何度やってもこうなる、と呟く。
「……今回のステージのミッションプランは、船舶の撃沈を阻止、敵勢力を殲滅する。エクシアで上をやってもらっても、海からの攻撃に対してはどうしても無防備だ。ましてや単独ミッションだとさらに厄介になる……」
「そこで、DG014を使用することによって、違う戦い方になる」
ティエリアはデュナメスをポイントに移動させて固定、エクシアはまず海中に展開しているシュウェザァイに接近する。MSが海上展開するまでに50秒、その間シュウェザァイに肉薄し進行コースを妨害した。デュナメスが装備したDG014よりGN魚雷を進行想定コースに向けて発射、エクシアは浮上して海上展開したMS隊と戦闘を開始する。進路妨害を受けコースを変更したシュウェザァイは、GNミサイルと違い速度調節機能を持つため、適切な進路想定を行える魚雷によりダメージを受け足止めされた。
その間にエクシアとデュナメスがMS隊を一掃し、最終的にシュウェザァイを撃沈した。
「……マジか」
「あなたが行えば第一撃でけりはついただろう」
他にも戦い方はあるはずだ、と言い置いて、ティエリアはハッチを蹴ってデュナメスから出た。変わりにシートに収まったロックオンを見やり、流れるような優雅さで体勢を整え離れていく。
「ティエリア!」
ナビゲーションバーに捕まり、ヴァーチェを整備しているコンテナへ向かうところで声を掛けられたティエリアは視線を送った。ロックオンは、助かった! ありがとうな! と手を振ってコクピットへ戻っていく。
どうやら喜ばれたらしい。
道すがら、今度はアレルヤ・ハプティズムと遭遇した。彼は搭乗機であるキュリオスの整備調整作業を行っていたようだが、昼食の頃合を見て出てきたらしい。時間を確認すると1150となっており、思わぬ時間を取られてしまったことをティエリアは悔やんだ。本来ならば己のスコアアップの為に時間を使うはずだったのに。
「それでね、今晩ロックオンのお祝をしようと思うんだけど」
「……だからなんだ」
「ティエリアもどう?」
「だから何を」
どいつもこいつも似たり寄ったりな話し方だ。何をどうするのか、意図的に外して会話をしているとしか思えない。急降下した機嫌を隠そうともせずにアレルヤに視線を送る。なぜ睨み付けられたのか理解できない哀れなアレルヤは、その大きな体を縮みこませるようにしながら喜んでくれるものを渡すとか…… と呟いたので、クリスティナ・シエラの言葉を思い出したティエリアは告げた。
「……喜ばれることならば先ほどやってきた」
「あぁ……そうなの」
アレルヤの横をすり抜け、今度こそコンテナへ向かったティエリアは、己の発言をうけて、「ロックオンが喜ぶことをしたティエリア」を想像できずに(また、余計なことをハレルヤに言われて)アレルヤが動揺したことを知らなかった。
そして、その彼が挙動不審になり、他のクルーに追及されて白状して余計に混乱を招いてしまい、ロックオンと共にあらぬ疑いを掛けられてしまうことも。
アレルヤ・ハプティズムは戦術予報士の強引さに苦笑しながらも、己自身が事の発端であったこと、さらに体験済みであったが為に協力を惜しまないと宣言した。刹那・F・セイエイはほぼ巻き込まれたという形であったが、強制的に告白させられたいずれ訪れる「その日」に得られる権利を約束され、興味はないものの断れば後が面倒なことが予想されたため了承した。
「その日」が訪れることを認識はしたが、「その意味」を理解していなかったティエリア・アーデは秘匿義務に反する行為をこと楽しげに行っている同僚達に不快感を覚え一切の協力を言外にて拒絶した。もとより、誰もティエリア・アーデにそれを期待しているわけではなかったので、そのまま良しとされ、ティエリアは煩わしい想いを抱えつつもシフトに定められた行動をそのまま行っていた。
起床後、朝食を終えてプトレマイオスの通路を移動していたティエリアは、5日ぶりにクリスティナ・シエラとフェルト・グレイスの姿を見た。彼女たちは乗務員規定に基づき休暇に赴いており、その間の艦内オペレーションはティエリアが担当していたのだが、昨晩戻ってきたのなら本日より通常ルーチンに戻るはずだ。これから行われるミーティングでその旨指示されるだろう。
ブリーフィングルームの前に至り漸くティエリアに気が付いた二人は、休暇中にティエリアが業務担当していたことを知っていたので、簡単に引き継ぎを行うことを約束して入室していった。遅れて入室したティエリアは、既に待機していた他のメンバーと「朝の挨拶」を交わし(言いように難ありではあるが)姿勢を固定する。
戦術予報士のスメラギ・李・ノリエガが入室してからミーティングが始まる。通常シフト通りであれば30分ほどで終了するので、その間ティエリアは己の報告義務事項を述べれば発言を求められない限り沈黙しているのが常であった。ミッションプランが提示されれば意見を述べるが、本日、明日と介入行動を行う予定はないという。きな臭い地域が現れ始めているが、今朝のミーティングにおいてスメラギ・李・ノリエガはミッションの可能性を示唆するのみで終わった。
ティエリア個人に関わる事項としては、予定通りクリスティナとフェルトが帰還したため本日1030以降オペレーション業務を外れ、通常ルーチンに戻るようにとの指示である。了解を伝えてからクリスティナに視線を向けると、彼女は申し送りよろしくね、と言葉を返してきた。
「ティエリアはどうするの?」
「何をです」
彼女たちの不在時に起こったあらかたの事項を伝え、継続中の調査事項などを引き継いでから手にした端末を閉じたティエリアは、一言述べて席を立とうとしたがその前に掛けられた声に動きを止めた。何の話だと言葉を発したクリスティナを見やると、彼女は唯でさえ緩み気味であるのに(かなりティエリアの主観が入っている)さらにその表情を緩ませて誕生日よ! と言った。隣ではフェルトが頷いている。
「一体何の話ですか」
「……忘れたの?」
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信じられないと言い放ち立ち上がったクリスティナは、その小さな体を大きく見せるかのように腰に手を当て、ティエリアを見下ろした。いつもと逆だなと思ったが、口には出さなかった。だが「忘れる」という事項については訂正を要求したい。ティエリアにはありえないことだ。口に出そうとすると、下で買ってきたわという言葉にさえぎられた。クリスティナとフェルトを見ながら、一体何の話なのか理解できずにいると、プレゼントよ! といわれた。
「……だから、何の話だと聞いている」
さっぱり理解できない。優秀なオペレーターであることは認めるが、こうも理解不能な話を繰り出すのは問題があるのではないかとヴェーダに申告すべきだろうか。そもそも1030より通常ルーチンに戻るのだ、しかもあと5分しかない。これからオペレーション業務で滞っていたシミュレーションプログラムにおいて、ステージ4のスコアを上げたいと考えていたティエリアにとって理解しがたい会話が苦痛だった。
「誕生日なのよ、ロックオンの!」
そう言われてからティエリアは先日よりクルーが生年月日の件について議論していたという記憶を呼び出した。そしてマイスター以下、当艦に乗り合わせているクルー全員に秘匿義務があるというのに率先して放棄するとは何事かとあきれ返ったのだった。もちろんティエリアにはそのような愚かな行為に賛同するつもりもいわれもなかったので、誕生日にはプレゼントを渡すだの、喜ばれるものを探すのがよいのだの、無駄なおしゃべりには付き合っていられないとばかりに無言で部屋を退出した。丁度、時間になったのもある。
シミュレーションプログラムは各機にインストールされてあるが、他にシミュレーターがブリーフィングルーム横の一室に設置されている。これは各マイスターの他に操舵を担当するリヒテンダール・ツェーリや砲撃手のラッセ・アイオンも利用しており、つまりは操舵、砲雷関係のシミュレーターでもあるわけだ。時折、ティエリア以外のマイスターらとつるんで大騒ぎしているのを幾度か見かけたことがある。
とはいえ、マイスター達が主にシミュレーションを行うのは各機に搭乗してのことなので、ティエリアもパイロットスーツに着替えるためにコンテナへ向かう。その途中、珍しくパイロットスーツのままで飲料用ボトルのストローを口にしながら何かを考え込んでいるらしいロックオン・ストラトスと遭遇した。通路で呆けている(ようにティエリアには見えた)様子が珍しく、しかも気配には聡い男がティエリアの接近にも関わらず何のリアクションも起こさない様子が気になって足を止めてしまった。
「ロックオン・ストラトス」
「おぉ」
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「何かありましたか」
「あ?」
「何か懸案事項でも」
あるのですか、と続けたティエリアにロックオン・ストラトスはようやく視線を向けたが、その顔が浮かべている表情は何とも表現しがたいものであった。ティエリアはそう感じたが、スメラギ・李・ノリエガあたりが見ればまた違う所感を述べたであろう。すなわち「意外な奴に思いもよらぬ言葉を掛けられた」というものである。
そういう表情を隠しもしなかったロックオンだが、あいにくティエリアは「表情を読み取る」という能力を割り振ってはいなかったので、軽く首をかしげる程度に反応を返した。
う、とか、ぐ、とかいう声を漏らしたロックオンは口を押さえ天井だか壁だかに視線をやって何かを呟いていたが(畜生なんだ可愛いじゃねえかよ)、やがて落ち着いたのかようやっとティエリアに向き合い口を開く。
「ちょっとシミュレーションで詰まってなぁ…… もうちょっと上手くやれそうなんだが」
返答に時間が掛かった割にはそこまで重大な案件ではなさそうに感じたが、シミュレーションのステージスコアはヴェーダにも報告されるので、ロックオンが重要視するのも当然である。
「どのステージです」
そう返したティエリアに対し、今度こそロックオンは唖然とした表情を堂々と晒してボトルから手を離してしまったのだった。
ロックオンの選択しているステージは3、人革連領内インドシナ海域にて反太陽光発電を掲げる過激派グループの戦闘行為に介入するというものだ。テロリストの攻撃対象は人革連所属の輸送船舶3隻、またそれらに1隻が付き、船舶護衛目的にある程度の武装をしている。テロリスト側の戦力は人革連が払いおろしたMAシュウェザァイが1機、他にMSアンフ、ヘリオンがそれぞれ2機ずつ。MS輸送艦として1隻確認されているという設定だ。
戦力比としては圧倒的にこちらが上になるのだが、水中戦用のMAが配備されていることもあり、戦い方にコツがいるステージだ。水中戦専用の機体はガンダムには無く、各機パイロットは自身の機体を対応して運用する必要があるため、近接戦闘に特化しているエクシアと高起動戦闘に特化したキュリオスでは急速接近、一撃離脱の戦法を多く採用しているとヴェーダへ報告されている。
パイロットスーツに着替えたティエリアはロックオンと共にコンテナへ移動し、許可を得てからデュナメスのコクピットに乗り込んだ。シートの奥にロックオンが移動し、ティエリアはシートに腰掛けてシミュレーションプログラムを立ち上げる。
「武器の選択は?」
「通常装備だろうが。着装武装はGNライフル、ピストル、ミサイル……」
「通常通りでなら間違いはない。だが、このステージではデュナメスにもう一つ装備が選択できることに気がついていましたか?」
「……なんだって?」
ティエリアはコントロールパネルに触れてカーソルを動かし、使用武器選択画面一番最後の項目に『DG014』と表示される装備を示した。ロックオンの目が丸くなる。
「なんだ?」
「対水中狙撃専用の装備です。GN魚雷を発射する。このステージにのみ選択が可能になっていて、デュナメス本体が水中戦闘を行うわけではないが精度の落ちる水中への狙撃に対応した装備だ」
「見たことねぇぞ」
「デュナメスへの実装はまだ先だ。これからのミッション次第では使用することもある」
ステージを開始したティエリアは、ミッションパートナーであるエクシアを先行させ、海上にて展開しているMSに対して攻撃を指示。デュナメスはエクシアが追い込んでいくポイントに対して射撃を開始する。エクシアとデュナメスがミッションを組む場合は最も多く用いられる戦法だ。
「このステージで一番厄介なのはやはりシュウェザァイだ。ビーム兵装では水中での攻撃力が当然落ちる。ヴァーチェでは大出力での砲撃によってその点を強引にカバーできるが、精度を重視したライフルではそれも難しい」
「連射してもな」
「GNピストルではさらに能力が落ちる。あなたの腕でも撃墜までにかなりの時間を割かれるだろう。海上展開の機体に対してはそう手間取らないだろうが、シュウェザァイの水中機動力でもって攪乱されると面倒なことになる」
海上展開したMS全てに撃墜サインが出たころ、シュウェザァイより攻撃を受けた輸送艦が1隻航行不能となっていた。ロックオンは苦々しい表情で何度やってもこうなる、と呟く。
「……今回のステージのミッションプランは、船舶の撃沈を阻止、敵勢力を殲滅する。エクシアで上をやってもらっても、海からの攻撃に対してはどうしても無防備だ。ましてや単独ミッションだとさらに厄介になる……」
「そこで、DG014を使用することによって、違う戦い方になる」
ティエリアはデュナメスをポイントに移動させて固定、エクシアはまず海中に展開しているシュウェザァイに接近する。MSが海上展開するまでに50秒、その間シュウェザァイに肉薄し進行コースを妨害した。デュナメスが装備したDG014よりGN魚雷を進行想定コースに向けて発射、エクシアは浮上して海上展開したMS隊と戦闘を開始する。進路妨害を受けコースを変更したシュウェザァイは、GNミサイルと違い速度調節機能を持つため、適切な進路想定を行える魚雷によりダメージを受け足止めされた。
その間にエクシアとデュナメスがMS隊を一掃し、最終的にシュウェザァイを撃沈した。
「……マジか」
「あなたが行えば第一撃でけりはついただろう」
他にも戦い方はあるはずだ、と言い置いて、ティエリアはハッチを蹴ってデュナメスから出た。変わりにシートに収まったロックオンを見やり、流れるような優雅さで体勢を整え離れていく。
「ティエリア!」
ナビゲーションバーに捕まり、ヴァーチェを整備しているコンテナへ向かうところで声を掛けられたティエリアは視線を送った。ロックオンは、助かった! ありがとうな! と手を振ってコクピットへ戻っていく。
どうやら喜ばれたらしい。
道すがら、今度はアレルヤ・ハプティズムと遭遇した。彼は搭乗機であるキュリオスの整備調整作業を行っていたようだが、昼食の頃合を見て出てきたらしい。時間を確認すると1150となっており、思わぬ時間を取られてしまったことをティエリアは悔やんだ。本来ならば己のスコアアップの為に時間を使うはずだったのに。
「それでね、今晩ロックオンのお祝をしようと思うんだけど」
「……だからなんだ」
「ティエリアもどう?」
「だから何を」
どいつもこいつも似たり寄ったりな話し方だ。何をどうするのか、意図的に外して会話をしているとしか思えない。急降下した機嫌を隠そうともせずにアレルヤに視線を送る。なぜ睨み付けられたのか理解できない哀れなアレルヤは、その大きな体を縮みこませるようにしながら喜んでくれるものを渡すとか…… と呟いたので、クリスティナ・シエラの言葉を思い出したティエリアは告げた。
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