甘い話をかいてみよう3
前回の話(あなたのこのみ)は予定ではやきもち話(なにそれ)だったんですが
なんか違ってしまったのでリベンジ。
時期的には一期で、多分出来る直前かで出来てるのか微妙。
短い話ですっげえデレてます。
……すみません……
前回の話(あなたのこのみ)は予定ではやきもち話(なにそれ)だったんですが
なんか違ってしまったのでリベンジ。
時期的には一期で、多分出来る直前かで出来てるのか微妙。
短い話ですっげえデレてます。
……すみません……
+ + + + + + + + + +
機嫌が悪そうだ。
多分、誰に聞いても同意してくれるに違いないが、かといってその機嫌を繕ってくれるかと言えば誰も首を縦には振らないだろう。アレルヤと刹那は過去の経験上、とばっちりを食らう可能性が他の者より高いだけあって既に逃げだしているし、我関せずを貫き通すミス・スメラギにはよろしくと言われ、リヒティとラッセには頑張れと肩を叩かれた。
ということはやはり、この状態を何とかしなければ成らないのは俺だということになり、こうやって娯楽室という名であったはずの氷河地帯で、360度に向かって発せられている不機嫌オーラをびしばし感じながら紅茶を啜っているわけだ。
3杯目を飲み終えてそろそろ動かねばならないと思う、外野の連中の視線もびしばし感じて来ているので。協力する気はないくせにしっかり見学とはどういう事だと問いつめたいが、連中、ちゃっかり圏外に避難してカードゲームに手を出してやがる。あとで覚えてろ。
とにかくその不機嫌の固まり、名をティエリアと言うが、これまた類を見ない美貌の持ち主である。各パーツの整った形はもちろん、黄金比とやらを確実に体現しているであろうその配置といい、姿態といい、俺は賛美の言葉以外を持ち得ない。先程から形の良い眉が軽く顰められているが、そうであっても元の美しさを損なう事はなく、美人は不機嫌でも美人である。何を言っているのかというと、ティエリアはとにかく美人であって……つまり、その顔を眺めつつちょっと逃避しているのだが。
「先程から一体、何か用ですか」
……あまり長い時間の逃避は出来なかった。
ここは一つ、得意の世間話でも展開したい所だが、いかんせんここは宇宙で、ついでに機体のオーバーホールで7日ほどラグランジュ・ポイントに滞在中だったりする。連中が話の種にと遠巻きにしている理由もそれだ。よりにもよって4機そろっての総点検、ラインスタッフは総出で暇を持て余している状態で、世間話のネタなぞあるはずもなかった。
「いや、まぁ。……何読んでいるんだ?」
先程から眉を顰めつつ携帯端末を覗き込んでいるので、また面白くない情報でも拾ってしまったのかと(それで機嫌が悪いのかと)踏んだのだが、貴方には関係ありませんと何とも素っ気ない返事。いつもならこの後もう一言くらいの皮肉が飛んでくるのだが、こちらから目を逸らせたままで見向きもしない。話しかける為のネタがどんどん減っていくどころか、減るまえにシャットダウンときた。これはちょっと手強いぞ。
どうするかと持て余して空を仰ぐと、ぼそりとティエリアが口を開いた。
「……無理してお付き合い下さらなくても結構です。現在我々には待機命令が出ておりますし、その間は定時連絡以外で特に報告義務はない。どう過ごそうと問題はありません。だから僕がここで何をしていたって構わないでしょう。貴方はどうせ僕といたってつまらないんでしょうし、他にいろいろと時間を潰せる相手がいるんでしょうし、だったら話掛けてこなくてもいいでしょう。僕だって作業がはかどらないから迷惑しているんです。最近プログラムの更新がすごくはかどりましたよ、貴方が来ないから。確かに現在マイスターが行えることは少ないですが、かといって全く連絡がつかないというのもどうかと思います」
常に無い饒舌。呆気にとられるが、内容はもっとまずい。もっともな事を言おうとしているのは分かるんだが、話は段々とご無沙汰している俺への苦情になりつつある。ゲームしながら聞き耳をたてている外野の連中が気になるが、ティエリアはそんな事は知った事かと言葉を止める気配がない。というより気がついていない。とうとう口を挟む間を与えずに、端末を閉じてこちらに顔を向けてきた。どころじゃなくて体ごとだ。堂々と向かい合ってなお言い募る。
「刹那・F・セイエイやアレルヤ・ハプティズムは基礎訓練に誘っていたようですね。そのような手間があるのなら、少しでも戦闘データの検討などをなさったらいかがですか。ここにつく前はその為に時間をくれと僕に言ったくせに、一切連絡がないというのはどういう訳ですか。僕はおかげさまで部屋からもそうそう離れられませんでしたよ。それに」
「ちょ……っと待て! 分かった、悪かった、場所を変えよう!」
事態に気づいた連中がゲームを放りだしてこちらを注視しているのが分かる。これ以上外野の視線には耐えられない、とりあえず娯楽室から抜け出すことにする。なんですか、僕はまだ話を終えていませんと言うティエリアの腕を掴んで立たせ、そのまま入り口へと進む。ここで立ち去れば連中にどんな話をされるかは分かっているが、俺はこれ以上耐えられそうにない。口では苦情を言いはするものの、抵抗なく連れ出されるティエリア。こいつが不機嫌な顔を晒してまで娯楽室に来て、普段ならすぐにでも退出するはずが居座っていたのも全部、俺に会う為だったのだろうか。確かにオーバーホール中にデータ解析を行いたいから助言を頼んだ覚えはある。……ただこれを言ったのはかなり前だ。それこそラグランジュ・ポイントに到着するどころか、地上ミッションの待機中だったように思う。正直言うと忘れていた。
居住区まで行くには遠すぎるし、かといってこのあたりでは娯楽室から追いかけられても困るという事で、とりあえず人気の少ないライブラリ・ルームに侵入する。いくつかあるライブラリ・ルームの中で、ここは主に宇宙資材に関する資料が整っている。メカニック以外で資料検索なぞする人間は俺の目の前にいる美人さんくらいしか知らないし、現在メカニックはオーバーホールで大わらわだからこの部屋に入ってくる人間はそうそういない。入り口から死角になる一番奥のパーテーションにティエリアを放り込んで、ようやく一息ついた。
「なんですか、ここで検索でも?」
「違う、俺はここでは何を見たってさっぱりだ。……とにかくだな、ティエリア。俺が連絡を寄越さなかったことを言ってるのか?」
「約束を反故にされると誰でも腹が立つでしょう!」
「いや、お前、俺がデータ解析の件を頼んだのは随分前の話で……約束した覚えは無いんだがな」
「っ、あ、貴方が言ったんじゃないか!待機命令が出たら、娯楽室には顔を出してこいとか!そうしてたのに、刹那やアレルヤと訓練して、僕は」
重力負荷区での基礎訓練で組み手をする時は体格が似た相手を選んでいて、それでアレルヤに声を掛けていた。刹那は主に筋トレが中心で、時折アレルヤが相手をしていた。格闘実践経験が有る2人は一番組み手をしやすいらしい。別にティエリアが弱いのではないが(瞬発力は刹那に若干劣るがそれでも早いし的確に急所をついてくる)、どうしてもフルコンタクトではやり辛い相手なのだ。
段々と言っている事が可愛らしいものになってきた。約束はしていなかった、という自覚があったから娯楽室でも言い出せず、俺が声をかけてくるのを待っていたのだろう。ところが俺は刹那やアレルヤに声をかけていて自分にちっとも寄ってこないことが結局一番腹立たしいと。
「……俺が刹那とかアレルヤにばかり声かけるから腹立ててるのか?」
「別に怒ってなどいない!」
「フツーそういうのは怒ってるって言うの。……なんだよ、焼きもちか……」
「? なんですか? それは?」
さも心外、という顔つきで尋ねられるのならこちらにも対処しようがある。だが、首を傾げながら素で聞くな。その言葉の意味を解説しろとか言うな、頼むから。なんだこれは、新手の罰ゲーム? まさか嫉妬の意味を問われるとは思っていなかった、特にこういう……対人関係でもデリケートな方面においては。思わず顔を覆ってしまう。娯楽室を氷河地帯に変えていた理由は俺にあったらしいのは良くわかった。解決策を講じるのも俺だろう。だがこの罰ゲームは人前ではやれない。早々に娯楽室を退出しておいて良かった、これ以上あいつらに話題提供なぞしてやるものか。
「……分かった。一緒にいてやる……」
嫉妬についての解説はさておき、とりあえず今日はこの美人さんのご機嫌を伺うにこした事はなさそうだ。俺の部屋にいくか?と聞けば、すんなり頷いて解析しますか、とか聞いてくる。大きく表情は変わらないが、嬉しそうだ。
理由は釈然としないが、可愛らしい嫉妬にはつきあってやっていい。対人関係の解説も込みで色々やらせてやろう。
そりゃもう、お前の「お気に召すまま」に。
多分、誰に聞いても同意してくれるに違いないが、かといってその機嫌を繕ってくれるかと言えば誰も首を縦には振らないだろう。アレルヤと刹那は過去の経験上、とばっちりを食らう可能性が他の者より高いだけあって既に逃げだしているし、我関せずを貫き通すミス・スメラギにはよろしくと言われ、リヒティとラッセには頑張れと肩を叩かれた。
ということはやはり、この状態を何とかしなければ成らないのは俺だということになり、こうやって娯楽室という名であったはずの氷河地帯で、360度に向かって発せられている不機嫌オーラをびしばし感じながら紅茶を啜っているわけだ。
3杯目を飲み終えてそろそろ動かねばならないと思う、外野の連中の視線もびしばし感じて来ているので。協力する気はないくせにしっかり見学とはどういう事だと問いつめたいが、連中、ちゃっかり圏外に避難してカードゲームに手を出してやがる。あとで覚えてろ。
とにかくその不機嫌の固まり、名をティエリアと言うが、これまた類を見ない美貌の持ち主である。各パーツの整った形はもちろん、黄金比とやらを確実に体現しているであろうその配置といい、姿態といい、俺は賛美の言葉以外を持ち得ない。先程から形の良い眉が軽く顰められているが、そうであっても元の美しさを損なう事はなく、美人は不機嫌でも美人である。何を言っているのかというと、ティエリアはとにかく美人であって……つまり、その顔を眺めつつちょっと逃避しているのだが。
「先程から一体、何か用ですか」
……あまり長い時間の逃避は出来なかった。
ここは一つ、得意の世間話でも展開したい所だが、いかんせんここは宇宙で、ついでに機体のオーバーホールで7日ほどラグランジュ・ポイントに滞在中だったりする。連中が話の種にと遠巻きにしている理由もそれだ。よりにもよって4機そろっての総点検、ラインスタッフは総出で暇を持て余している状態で、世間話のネタなぞあるはずもなかった。
「いや、まぁ。……何読んでいるんだ?」
先程から眉を顰めつつ携帯端末を覗き込んでいるので、また面白くない情報でも拾ってしまったのかと(それで機嫌が悪いのかと)踏んだのだが、貴方には関係ありませんと何とも素っ気ない返事。いつもならこの後もう一言くらいの皮肉が飛んでくるのだが、こちらから目を逸らせたままで見向きもしない。話しかける為のネタがどんどん減っていくどころか、減るまえにシャットダウンときた。これはちょっと手強いぞ。
どうするかと持て余して空を仰ぐと、ぼそりとティエリアが口を開いた。
「……無理してお付き合い下さらなくても結構です。現在我々には待機命令が出ておりますし、その間は定時連絡以外で特に報告義務はない。どう過ごそうと問題はありません。だから僕がここで何をしていたって構わないでしょう。貴方はどうせ僕といたってつまらないんでしょうし、他にいろいろと時間を潰せる相手がいるんでしょうし、だったら話掛けてこなくてもいいでしょう。僕だって作業がはかどらないから迷惑しているんです。最近プログラムの更新がすごくはかどりましたよ、貴方が来ないから。確かに現在マイスターが行えることは少ないですが、かといって全く連絡がつかないというのもどうかと思います」
常に無い饒舌。呆気にとられるが、内容はもっとまずい。もっともな事を言おうとしているのは分かるんだが、話は段々とご無沙汰している俺への苦情になりつつある。ゲームしながら聞き耳をたてている外野の連中が気になるが、ティエリアはそんな事は知った事かと言葉を止める気配がない。というより気がついていない。とうとう口を挟む間を与えずに、端末を閉じてこちらに顔を向けてきた。どころじゃなくて体ごとだ。堂々と向かい合ってなお言い募る。
「刹那・F・セイエイやアレルヤ・ハプティズムは基礎訓練に誘っていたようですね。そのような手間があるのなら、少しでも戦闘データの検討などをなさったらいかがですか。ここにつく前はその為に時間をくれと僕に言ったくせに、一切連絡がないというのはどういう訳ですか。僕はおかげさまで部屋からもそうそう離れられませんでしたよ。それに」
「ちょ……っと待て! 分かった、悪かった、場所を変えよう!」
事態に気づいた連中がゲームを放りだしてこちらを注視しているのが分かる。これ以上外野の視線には耐えられない、とりあえず娯楽室から抜け出すことにする。なんですか、僕はまだ話を終えていませんと言うティエリアの腕を掴んで立たせ、そのまま入り口へと進む。ここで立ち去れば連中にどんな話をされるかは分かっているが、俺はこれ以上耐えられそうにない。口では苦情を言いはするものの、抵抗なく連れ出されるティエリア。こいつが不機嫌な顔を晒してまで娯楽室に来て、普段ならすぐにでも退出するはずが居座っていたのも全部、俺に会う為だったのだろうか。確かにオーバーホール中にデータ解析を行いたいから助言を頼んだ覚えはある。……ただこれを言ったのはかなり前だ。それこそラグランジュ・ポイントに到着するどころか、地上ミッションの待機中だったように思う。正直言うと忘れていた。
居住区まで行くには遠すぎるし、かといってこのあたりでは娯楽室から追いかけられても困るという事で、とりあえず人気の少ないライブラリ・ルームに侵入する。いくつかあるライブラリ・ルームの中で、ここは主に宇宙資材に関する資料が整っている。メカニック以外で資料検索なぞする人間は俺の目の前にいる美人さんくらいしか知らないし、現在メカニックはオーバーホールで大わらわだからこの部屋に入ってくる人間はそうそういない。入り口から死角になる一番奥のパーテーションにティエリアを放り込んで、ようやく一息ついた。
「なんですか、ここで検索でも?」
「違う、俺はここでは何を見たってさっぱりだ。……とにかくだな、ティエリア。俺が連絡を寄越さなかったことを言ってるのか?」
「約束を反故にされると誰でも腹が立つでしょう!」
「いや、お前、俺がデータ解析の件を頼んだのは随分前の話で……約束した覚えは無いんだがな」
「っ、あ、貴方が言ったんじゃないか!待機命令が出たら、娯楽室には顔を出してこいとか!そうしてたのに、刹那やアレルヤと訓練して、僕は」
重力負荷区での基礎訓練で組み手をする時は体格が似た相手を選んでいて、それでアレルヤに声を掛けていた。刹那は主に筋トレが中心で、時折アレルヤが相手をしていた。格闘実践経験が有る2人は一番組み手をしやすいらしい。別にティエリアが弱いのではないが(瞬発力は刹那に若干劣るがそれでも早いし的確に急所をついてくる)、どうしてもフルコンタクトではやり辛い相手なのだ。
段々と言っている事が可愛らしいものになってきた。約束はしていなかった、という自覚があったから娯楽室でも言い出せず、俺が声をかけてくるのを待っていたのだろう。ところが俺は刹那やアレルヤに声をかけていて自分にちっとも寄ってこないことが結局一番腹立たしいと。
「……俺が刹那とかアレルヤにばかり声かけるから腹立ててるのか?」
「別に怒ってなどいない!」
「フツーそういうのは怒ってるって言うの。……なんだよ、焼きもちか……」
「? なんですか? それは?」
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