ヴァレンタインネタ 家族パロ編。
基本設定は「ハレルヤの朝」をご覧下さいまし。
あれ二話目はどうなっった(脱兎)
なんかタイトルをどっかで見た気がしないでもない。すみません。
今更とか言わないでね!(自爆)
えー 全員キャラが崩壊してると思いますとくにライルが。
ごめんなさいごめんなさい
本編の超展開に耐えかねて、仲良ししてるマイスターを書きたくなりました。
基本設定は「ハレルヤの朝」をご覧下さいまし。
あれ二話目はどうなっった(脱兎)
なんかタイトルをどっかで見た気がしないでもない。すみません。
今更とか言わないでね!(自爆)
えー 全員キャラが崩壊してると思いますとくにライルが。
ごめんなさいごめんなさい
本編の超展開に耐えかねて、仲良ししてるマイスターを書きたくなりました。
+ + + + + + + + + +
明日は久方の休みである。
一つ、案件を片づけてようやっと得た全日休暇である。
ライルはこの僥倖を満喫せんと、愛しい愛しいチビたちと夕食を共にし、ついでにどちらか一人ベッドに連れ込もうとしたが上の兄とすぐ下の弟に阻止されて寂しく独り寝と相成った。
たまには良いだろ、俺だって抱っこして寝たい! などと言ってみたが、返事は絶対零度の視線と「お前が言うと何かいかがわしい」とかいう言葉だった(無礼な!)。ある意味立場が似ている二番目の弟は良くてなんで己がダメなのか、待遇について諸々思うところはあれど、一足先にベッドに入るチビ達がおやすみなさい、と頬にキスをして手を振ってくれたので良しとすることにした。
身体に合わせればそれなりの大きさになる寝台に身体を横たえ、さんざ試して選んだベッドマットの感触を確かめつつ、本日の行動を顧みる。ライルの就寝時における日課である。恐らく兄のニールは執筆中の作品の構想を練っているのだろうし、下の双子はレポートの内容を推敲しているかもしれず、そしてチビ達は。……明日のおやつのことでも考えているのだろうか。案外あの子達は食べ物に弱い。
食べ物を、と思い出して、どうしても漏れるため息。本日の行動、特に昼休みからの行動を思い出してのことだ。
14日。世間でいうヴァレンタイン・デーであった。
この家の兄弟は揃いも揃って標準以上の容姿を持つ上に、それぞれに性格が違うため相手方の好みによって渡す相手が異なるらしい。
ニールは以前勤めていた書店や出版社の職員。チビ達の通う幼稚園の先生方やお母さん方。
ライルは言わずもがなの職場や取引先、昼食に赴く店の女性店員。
アレルヤ、ハレルヤは大学の女子学生や通学途中の女子高生。小学生からなんてのもあった。
見事にそれぞれの傾向が分かれ、それらが毎年一斉に押し寄せプレゼントの山が築かれるのである。
どうやら某国発祥の慣習が随分と根付いたようで、ここ数年の傾向から鑑みると送られるプレゼントの内容はチョコレートが多くなっていた。山と積まれたチョコレートの箱を見てはしゃいでいるのはチビ達だけで、貰った当人達はうんざりとした顔を浮かべそれらを眺めてはため息をつく。お礼も出来ないし、受け取らないようにしていると言ってはみても、所詮男に女性の情熱をかわせる術はなく、両手に抱えることになるのだった。
ほぼ毎年繰り返される行事にライルの勤め先では警備員が気を利かせて段ボールを用意しており、紙袋を抱えて駐車場までやってくるライルと共に箱に詰め直す作業を手伝ってくれる。お礼にいくつか箱の中から選んで手渡したのだが、いまいちヴァレンタインの意味合いも理解していないようであったし、妻に先立たれた高齢の男性なので問題無いだろうと軽い気持ちでいたら、後ほどニールに知られて説教され、酒を一本渡してからは確実に毎年用意してくれるようになった。
内容は大手会社に勤めるOLの皆さんの情報網を駆使したもので、ヴィジョンで紹介される店にとどまらず、高名なパティシエやショコラティエを擁する店など多岐にわたる。正直甘いものにそれほど興味がないライルとはいえ、仕事に関するのであれば(特に相手方が女性であれば)その手の店をチェックはしているから兄弟に比べれば情報通だと言って良い。それでも知らない店のものはあるのだ。チョコレートではなくとも、男性の好む品物を扱う店などもチェックできるし、実はこのプレゼント攻勢も情報収集としては役に立っているのだった。
今年は14日が週末と重なったため、例年の被害(としかいえない)から逃れられると思っていたのだが、そんなことで情熱を逸らそうという小賢しい智恵をあざ笑うかのように週明けの出勤日、ライルの机上をはじめとするあらゆる場所で、プレゼント攻勢が迫ってきたのだった。
とはいえ、そこで困るのがその後の処理である。
1人分ならまだ何とか処理できるだろうが抱えてくる山が4つになってしまい、そしてまとめて大山になるわけであるからして、どうやっても一家族として処理できる量を超えているのだ。基本食べ物を大事にが信条の長男が散々悩んだ結果、どうしても不可能な状態であるもの以外は有効利用というわけで、再加工する事になった。
それでも処理しきれないので、アレルヤの提案で選別したものを再びラッピングして、彼らが18歳まで世話になった施設へプレゼントしようということになったのが夕食後、お茶をしながらの会議の結果だ。
そうとなればと明日が休みのライル、試験が終了して晴れて春期休暇に入ったアレルヤとハレルヤ、つまり全員でチョコの再利用を行うと家長で長男のニールが宣言したのだった。
片っ端から開封して選別されたチョコレートは、メーカー問わず全て湯煎用としてボウルに放り込まれていく。酒が含まれる系統はまた分けられて成人用のおやつになり、しばらくは夜のお茶受けとして活用される。(もちろんチビたちが寝た後の話だ)
嬉しそうに箱を開けてはニールとアレルヤにお伺いを立ててボールに入れたり、箱にしまったりをしているチビ達を眺めつつ、今日のデザートはチョコレートフォンデュだと知らされたライルとハレルヤはどっとため息をついた。そういう彼らは現在、かれこれ3つめのボールを湯煎に掛けているのだが、この湯煎されたチョコレートをこれまたニールお手製のクッキーやらマシュマロやらに塗りつける作業が待っている。
さすがに溜まりかねたのか、ハレルヤが天井を仰きつつ叫んだ。
「ピクルスが食いたい。いやこの際ビネガーを舐めたっていい」
「おい、健康志向に鞍替えか?」
「そいつはいつの時代の話だってんだ」
「……刹那達に火傷させるわけにはいかないんだから、しっかり頑張ってね」
『りょうかーい』
アレルヤに言われてから躍起になってボウルをかき回す二人に、お湯を入れないように注意したニールが、チョコレートケーキの生地をオーブンに放り込んでチョコレート選別作業に戻ってきた。幼い手で丁寧に包装を解いていく刹那とティエリアの頭を撫でてから徐に掴んだ箱の中身をボウルに放り込むのを見て、ライルは思わず口を出してしまった。
「兄さんそれ、エヴァンのボンボンショコラ……」
「……? チョコレートなんだから変わらんだろ?」
某国の有名なショコラティエの作品と、量販店で売られている一山いくらの商品が同じように放り込まれるカオスなボウル。一回テンパリングされてあるチョコレートを一緒に溶かしても大丈夫なのかとか、そう言えば若干アルコールが入っているのでは、等という心配事もあるが、意外にニールはそのあたり大雑把なのだった。
確かにこれだけあればそれぞれがどういう代物でという価値は無きに等しいが、とても送り主には見せられない。というか見せたくない。価値は知っているはずなのに拘らないニール、チビ達に影響がなければそれで良いアレルヤ、元から意味が分かっていないチビ達と、もう食えりゃ何でも良いハレルヤ。彼女たちにはそれなりに誇大脚色演出をされているに違いない自分たちの日常が、まさかこのようなものだとは想像も付かないだろう。しかしそれで構わない、実際の自分たちは可愛いチビ達の為ならば、この家一杯に充満している臭気(もはや臭気だ)にだって耐えてボウルの中身をかき回すのだ。
「よーしおわり!」
というニールの一声で、ライルとハレルヤは持っていたラッピング用のリボンを放りだし、アレルヤはおつかれさまと声を掛けながら刹那とティエリアを撫で、二人は笑った。ニールの役に立ったのが嬉しいのだ。元から器用なアレルヤ指導のもと、ぎこちない手つきでリボン結びを延々と行っていたので全身が強ばっている。お茶を入れてくるね、とアレルヤが席を立つとハレルヤが珍しく手伝うために付いていった。恐らくは身体を動かしたかったのだろう。
様々にラッピングされたチョコレート細工のお菓子を形を壊さないように箱詰めしていたニールは、刹那とティエリアが何か言いたげに自分を見つめているのに気が付いた。どうしたのかと尋ねると、ちょっと考えるように小首を傾げて(あまりに可愛らしいので意識が飛びかけた)余ったチョコレートが入っているボウルを差し出してきた。もう少し作りたいのかと問いかけると、しきりに頷く。しかしもうクッキーもマシュマロも、ケーキも使ってしまっている。今回は諦めるように言ったがチビ達が熱心に頼むものだから、結局は甘いニールが折れて余ったチョコレート、無塩バター、生クリームで簡単なトリュフを教えることにした。
火傷をしないようにとの監視付きで、小さな手のひらでチョコレートを転がす。刹那は器用に形を作っていったが、意外にティエリアが不格好なものだから見かねたアレルヤが手を添えてやった。恐らく力加減が上手くいかなかったのだろう、嬉しそうに微笑むのでその時点でニールは使い物にならなくなっている。余った量も多くないし結局二人が作れたのは8つほどであったがどうやら満足したようで、ありがと、と言った(ちなみにこの時点でニールは撃沈した)。アレルヤが入れ直したお茶を飲みながら冷蔵庫で冷やしている間、チビ達は珍しく部屋に籠もっていた。おやつが大好きな二人が見向きもせずに部屋に籠もってしまったので、ニールは動揺しアレルヤは思索にふけり、あまり役に立ちそうになかったのでライルとハレルヤがこっそりと部屋を覗くことにする。そっとドアの隙間から伺うと、どうやら二人は小さな箱をいくつか取り出して、何かを話し合っているように見えた。幼い二人が何を話しているのは全く分からないのだが、チビ同士には伝わる物があのだろう。実は羨ましいと思っているのは秘密だ。
刹那が箱を差し出し、ティエリアがそれを眺めて何かを計っているように見える。一つ頷いてまた次の箱に移る。しばらく繰り返していると、今度はティエリアが刹那にリボンを差し出し、刹那が頷くと次のものに移る、という行動に変わった。何かを選んで居るようだが、全く意味が分からない。
「なんだありゃ。何の儀式だ?」
「俺が知るか、何なら聞いてみたらどうだ」
「バッカお前、チビ達がわざわざ隠れてやってるんだぞ」
「強引に出ると後がなぁ」
閉じたドアの前にヤンキー座りでボソボソと会話しているのが違和感ない二人だが、いきなりドアが開いて大人げなく慌てた。尻餅ついて変な顔している大人を怪訝な顔で伺っているが、部屋を覗かれていたという考えには至らないのが幼さである。
小さな手に二つづつ、箱をもった二人はそれを後ろ手に隠して不自然に横歩き、ぱっとキッチンに向けて走っていった。今度は大人二人が訝しげに見送る番である。ちなみに残り二名は未だ役に立たない。
「何だ?」
キッチンの主となっているのはニールである。彼は基本チビ達が興味を示せば扱える範囲でキッチンの作業をやらせるのがスタンスだったので、彼らにとってキッチンは「入っては行けない場所」ではない。そういうわけで、ニールはチビ達だけでキッチンに入っても彼らが目に届く範囲に、そして触れやすい場所に危険な物は一切置いていない。それをライルもハレルヤも知っているのであえて二人を追わなかったのだが、気になるのは気になる。さてこれは追うべきか、追わざるべきかと悶々とすることになったのだが、冷蔵庫のドアを開ける音がしたので、冷蔵庫ならば特に気にすることもないだろうとリビングに戻る。
冷め切ったコーヒーは飲めた物ではなかったが、ニールとアレルヤが今のところてんでダメなので仕方がない。キッチンにはチビ達が居るし、自主性を重んじるというか、チビ達がこちらに来て欲しくないのなら叶えてやろうという思いがある。かといって手持ちぶさたな二人は仕方なくヴィジョンを付け、たまたま放映中のフットボールに集中し始めた。
ニールが復活したのはその20分後である。
というのも、フットボールに興奮したライルとハレルヤが大声を上げたせいであり、その瞬間ヴィジョンでは強烈なミドルシュートがネットを揺らしていた。
「刹那とティエリアは?」
『正気に返って一言目がそれかよ』
突っ込んでから、そういえばキッチンに入っていってから戻ってきたのか見ていない。慌てたハレルヤが横にいるアレルヤを蹴倒してキッチンへ足を向けたが、その前にチビ達が揃ってリビングに入ってきた。相変わらず手を後ろに回している。
とりあえず安心した4人は、チビ達が座れるようにソファを移動してスペースを作って座るように手招いたが、なぜか二人は動かない。どうしたのかと注視されながらチビ二人はお互いに顔を見合わせ、うつむき、もう一度顔を見合わせて何かを確認したようだった。徐に後ろに回していた手を前に移動させると、小さな手のひらの上にはそれぞれ2つ、リボンの掛かった(ようにみえる)箱が乗せられていた。
『……? それは?』
4人のハモった声に促されるように、チビ達は一人一人にその箱を渡していった。
『いつもありがとう、だいすき』
箱の中には小さなトリュフが二つづつ。
ヴァレンタインの意味などまだ分からないだろうが、恐らくお世話に成った人へチョコレートをあげる日だと思ったのだろう。今日一日、兄弟は世話になった施設への贈り物としてチョコレート菓子を作ったのだから、チビ達もそうするべきだと考えたようだ。渡された箱は、刹那が買って貰ったキャラクターグッズの入っていた箱で特に気に入ったものをしまってあったものだし、リボンはティエリアがケーキやお菓子を包んであったものを気に入って取っていたものだ。ライルとハレルヤが見たあの儀式は、どの箱が良いか、どのリボンが良いか、二人で相談していたのだ。
箱は貧相で、リボンはしっかり結べていない。所々チョコレートで汚れているのは、トリュフを触った手のままで触れたせいだろう。それでも、4人がもらったどのプレゼントよりも素敵で、可愛らしくて、寄せられる想いは他の誰より一途で暖かい。
伺うようにこちらをみている刹那とティエリアを、4人は抱きしめた。
『ありがとう刹那』
『ありがとうティエリア』
『愛してるよ』
一つ、案件を片づけてようやっと得た全日休暇である。
ライルはこの僥倖を満喫せんと、愛しい愛しいチビたちと夕食を共にし、ついでにどちらか一人ベッドに連れ込もうとしたが上の兄とすぐ下の弟に阻止されて寂しく独り寝と相成った。
たまには良いだろ、俺だって抱っこして寝たい! などと言ってみたが、返事は絶対零度の視線と「お前が言うと何かいかがわしい」とかいう言葉だった(無礼な!)。ある意味立場が似ている二番目の弟は良くてなんで己がダメなのか、待遇について諸々思うところはあれど、一足先にベッドに入るチビ達がおやすみなさい、と頬にキスをして手を振ってくれたので良しとすることにした。
身体に合わせればそれなりの大きさになる寝台に身体を横たえ、さんざ試して選んだベッドマットの感触を確かめつつ、本日の行動を顧みる。ライルの就寝時における日課である。恐らく兄のニールは執筆中の作品の構想を練っているのだろうし、下の双子はレポートの内容を推敲しているかもしれず、そしてチビ達は。……明日のおやつのことでも考えているのだろうか。案外あの子達は食べ物に弱い。
食べ物を、と思い出して、どうしても漏れるため息。本日の行動、特に昼休みからの行動を思い出してのことだ。
14日。世間でいうヴァレンタイン・デーであった。
この家の兄弟は揃いも揃って標準以上の容姿を持つ上に、それぞれに性格が違うため相手方の好みによって渡す相手が異なるらしい。
ニールは以前勤めていた書店や出版社の職員。チビ達の通う幼稚園の先生方やお母さん方。
ライルは言わずもがなの職場や取引先、昼食に赴く店の女性店員。
アレルヤ、ハレルヤは大学の女子学生や通学途中の女子高生。小学生からなんてのもあった。
見事にそれぞれの傾向が分かれ、それらが毎年一斉に押し寄せプレゼントの山が築かれるのである。
どうやら某国発祥の慣習が随分と根付いたようで、ここ数年の傾向から鑑みると送られるプレゼントの内容はチョコレートが多くなっていた。山と積まれたチョコレートの箱を見てはしゃいでいるのはチビ達だけで、貰った当人達はうんざりとした顔を浮かべそれらを眺めてはため息をつく。お礼も出来ないし、受け取らないようにしていると言ってはみても、所詮男に女性の情熱をかわせる術はなく、両手に抱えることになるのだった。
ほぼ毎年繰り返される行事にライルの勤め先では警備員が気を利かせて段ボールを用意しており、紙袋を抱えて駐車場までやってくるライルと共に箱に詰め直す作業を手伝ってくれる。お礼にいくつか箱の中から選んで手渡したのだが、いまいちヴァレンタインの意味合いも理解していないようであったし、妻に先立たれた高齢の男性なので問題無いだろうと軽い気持ちでいたら、後ほどニールに知られて説教され、酒を一本渡してからは確実に毎年用意してくれるようになった。
内容は大手会社に勤めるOLの皆さんの情報網を駆使したもので、ヴィジョンで紹介される店にとどまらず、高名なパティシエやショコラティエを擁する店など多岐にわたる。正直甘いものにそれほど興味がないライルとはいえ、仕事に関するのであれば(特に相手方が女性であれば)その手の店をチェックはしているから兄弟に比べれば情報通だと言って良い。それでも知らない店のものはあるのだ。チョコレートではなくとも、男性の好む品物を扱う店などもチェックできるし、実はこのプレゼント攻勢も情報収集としては役に立っているのだった。
今年は14日が週末と重なったため、例年の被害(としかいえない)から逃れられると思っていたのだが、そんなことで情熱を逸らそうという小賢しい智恵をあざ笑うかのように週明けの出勤日、ライルの机上をはじめとするあらゆる場所で、プレゼント攻勢が迫ってきたのだった。
とはいえ、そこで困るのがその後の処理である。
1人分ならまだ何とか処理できるだろうが抱えてくる山が4つになってしまい、そしてまとめて大山になるわけであるからして、どうやっても一家族として処理できる量を超えているのだ。基本食べ物を大事にが信条の長男が散々悩んだ結果、どうしても不可能な状態であるもの以外は有効利用というわけで、再加工する事になった。
それでも処理しきれないので、アレルヤの提案で選別したものを再びラッピングして、彼らが18歳まで世話になった施設へプレゼントしようということになったのが夕食後、お茶をしながらの会議の結果だ。
そうとなればと明日が休みのライル、試験が終了して晴れて春期休暇に入ったアレルヤとハレルヤ、つまり全員でチョコの再利用を行うと家長で長男のニールが宣言したのだった。
片っ端から開封して選別されたチョコレートは、メーカー問わず全て湯煎用としてボウルに放り込まれていく。酒が含まれる系統はまた分けられて成人用のおやつになり、しばらくは夜のお茶受けとして活用される。(もちろんチビたちが寝た後の話だ)
嬉しそうに箱を開けてはニールとアレルヤにお伺いを立ててボールに入れたり、箱にしまったりをしているチビ達を眺めつつ、今日のデザートはチョコレートフォンデュだと知らされたライルとハレルヤはどっとため息をついた。そういう彼らは現在、かれこれ3つめのボールを湯煎に掛けているのだが、この湯煎されたチョコレートをこれまたニールお手製のクッキーやらマシュマロやらに塗りつける作業が待っている。
さすがに溜まりかねたのか、ハレルヤが天井を仰きつつ叫んだ。
「ピクルスが食いたい。いやこの際ビネガーを舐めたっていい」
「おい、健康志向に鞍替えか?」
「そいつはいつの時代の話だってんだ」
「……刹那達に火傷させるわけにはいかないんだから、しっかり頑張ってね」
『りょうかーい』
アレルヤに言われてから躍起になってボウルをかき回す二人に、お湯を入れないように注意したニールが、チョコレートケーキの生地をオーブンに放り込んでチョコレート選別作業に戻ってきた。幼い手で丁寧に包装を解いていく刹那とティエリアの頭を撫でてから徐に掴んだ箱の中身をボウルに放り込むのを見て、ライルは思わず口を出してしまった。
「兄さんそれ、エヴァンのボンボンショコラ……」
「……? チョコレートなんだから変わらんだろ?」
某国の有名なショコラティエの作品と、量販店で売られている一山いくらの商品が同じように放り込まれるカオスなボウル。一回テンパリングされてあるチョコレートを一緒に溶かしても大丈夫なのかとか、そう言えば若干アルコールが入っているのでは、等という心配事もあるが、意外にニールはそのあたり大雑把なのだった。
確かにこれだけあればそれぞれがどういう代物でという価値は無きに等しいが、とても送り主には見せられない。というか見せたくない。価値は知っているはずなのに拘らないニール、チビ達に影響がなければそれで良いアレルヤ、元から意味が分かっていないチビ達と、もう食えりゃ何でも良いハレルヤ。彼女たちにはそれなりに誇大脚色演出をされているに違いない自分たちの日常が、まさかこのようなものだとは想像も付かないだろう。しかしそれで構わない、実際の自分たちは可愛いチビ達の為ならば、この家一杯に充満している臭気(もはや臭気だ)にだって耐えてボウルの中身をかき回すのだ。
「よーしおわり!」
というニールの一声で、ライルとハレルヤは持っていたラッピング用のリボンを放りだし、アレルヤはおつかれさまと声を掛けながら刹那とティエリアを撫で、二人は笑った。ニールの役に立ったのが嬉しいのだ。元から器用なアレルヤ指導のもと、ぎこちない手つきでリボン結びを延々と行っていたので全身が強ばっている。お茶を入れてくるね、とアレルヤが席を立つとハレルヤが珍しく手伝うために付いていった。恐らくは身体を動かしたかったのだろう。
様々にラッピングされたチョコレート細工のお菓子を形を壊さないように箱詰めしていたニールは、刹那とティエリアが何か言いたげに自分を見つめているのに気が付いた。どうしたのかと尋ねると、ちょっと考えるように小首を傾げて(あまりに可愛らしいので意識が飛びかけた)余ったチョコレートが入っているボウルを差し出してきた。もう少し作りたいのかと問いかけると、しきりに頷く。しかしもうクッキーもマシュマロも、ケーキも使ってしまっている。今回は諦めるように言ったがチビ達が熱心に頼むものだから、結局は甘いニールが折れて余ったチョコレート、無塩バター、生クリームで簡単なトリュフを教えることにした。
火傷をしないようにとの監視付きで、小さな手のひらでチョコレートを転がす。刹那は器用に形を作っていったが、意外にティエリアが不格好なものだから見かねたアレルヤが手を添えてやった。恐らく力加減が上手くいかなかったのだろう、嬉しそうに微笑むのでその時点でニールは使い物にならなくなっている。余った量も多くないし結局二人が作れたのは8つほどであったがどうやら満足したようで、ありがと、と言った(ちなみにこの時点でニールは撃沈した)。アレルヤが入れ直したお茶を飲みながら冷蔵庫で冷やしている間、チビ達は珍しく部屋に籠もっていた。おやつが大好きな二人が見向きもせずに部屋に籠もってしまったので、ニールは動揺しアレルヤは思索にふけり、あまり役に立ちそうになかったのでライルとハレルヤがこっそりと部屋を覗くことにする。そっとドアの隙間から伺うと、どうやら二人は小さな箱をいくつか取り出して、何かを話し合っているように見えた。幼い二人が何を話しているのは全く分からないのだが、チビ同士には伝わる物があのだろう。実は羨ましいと思っているのは秘密だ。
刹那が箱を差し出し、ティエリアがそれを眺めて何かを計っているように見える。一つ頷いてまた次の箱に移る。しばらく繰り返していると、今度はティエリアが刹那にリボンを差し出し、刹那が頷くと次のものに移る、という行動に変わった。何かを選んで居るようだが、全く意味が分からない。
「なんだありゃ。何の儀式だ?」
「俺が知るか、何なら聞いてみたらどうだ」
「バッカお前、チビ達がわざわざ隠れてやってるんだぞ」
「強引に出ると後がなぁ」
閉じたドアの前にヤンキー座りでボソボソと会話しているのが違和感ない二人だが、いきなりドアが開いて大人げなく慌てた。尻餅ついて変な顔している大人を怪訝な顔で伺っているが、部屋を覗かれていたという考えには至らないのが幼さである。
小さな手に二つづつ、箱をもった二人はそれを後ろ手に隠して不自然に横歩き、ぱっとキッチンに向けて走っていった。今度は大人二人が訝しげに見送る番である。ちなみに残り二名は未だ役に立たない。
「何だ?」
キッチンの主となっているのはニールである。彼は基本チビ達が興味を示せば扱える範囲でキッチンの作業をやらせるのがスタンスだったので、彼らにとってキッチンは「入っては行けない場所」ではない。そういうわけで、ニールはチビ達だけでキッチンに入っても彼らが目に届く範囲に、そして触れやすい場所に危険な物は一切置いていない。それをライルもハレルヤも知っているのであえて二人を追わなかったのだが、気になるのは気になる。さてこれは追うべきか、追わざるべきかと悶々とすることになったのだが、冷蔵庫のドアを開ける音がしたので、冷蔵庫ならば特に気にすることもないだろうとリビングに戻る。
冷め切ったコーヒーは飲めた物ではなかったが、ニールとアレルヤが今のところてんでダメなので仕方がない。キッチンにはチビ達が居るし、自主性を重んじるというか、チビ達がこちらに来て欲しくないのなら叶えてやろうという思いがある。かといって手持ちぶさたな二人は仕方なくヴィジョンを付け、たまたま放映中のフットボールに集中し始めた。
ニールが復活したのはその20分後である。
というのも、フットボールに興奮したライルとハレルヤが大声を上げたせいであり、その瞬間ヴィジョンでは強烈なミドルシュートがネットを揺らしていた。
「刹那とティエリアは?」
『正気に返って一言目がそれかよ』
突っ込んでから、そういえばキッチンに入っていってから戻ってきたのか見ていない。慌てたハレルヤが横にいるアレルヤを蹴倒してキッチンへ足を向けたが、その前にチビ達が揃ってリビングに入ってきた。相変わらず手を後ろに回している。
とりあえず安心した4人は、チビ達が座れるようにソファを移動してスペースを作って座るように手招いたが、なぜか二人は動かない。どうしたのかと注視されながらチビ二人はお互いに顔を見合わせ、うつむき、もう一度顔を見合わせて何かを確認したようだった。徐に後ろに回していた手を前に移動させると、小さな手のひらの上にはそれぞれ2つ、リボンの掛かった(ようにみえる)箱が乗せられていた。
『……? それは?』
4人のハモった声に促されるように、チビ達は一人一人にその箱を渡していった。
『いつもありがとう、だいすき』
箱の中には小さなトリュフが二つづつ。
ヴァレンタインの意味などまだ分からないだろうが、恐らくお世話に成った人へチョコレートをあげる日だと思ったのだろう。今日一日、兄弟は世話になった施設への贈り物としてチョコレート菓子を作ったのだから、チビ達もそうするべきだと考えたようだ。渡された箱は、刹那が買って貰ったキャラクターグッズの入っていた箱で特に気に入ったものをしまってあったものだし、リボンはティエリアがケーキやお菓子を包んであったものを気に入って取っていたものだ。ライルとハレルヤが見たあの儀式は、どの箱が良いか、どのリボンが良いか、二人で相談していたのだ。
箱は貧相で、リボンはしっかり結べていない。所々チョコレートで汚れているのは、トリュフを触った手のままで触れたせいだろう。それでも、4人がもらったどのプレゼントよりも素敵で、可愛らしくて、寄せられる想いは他の誰より一途で暖かい。
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『ありがとうティエリア』
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