タイトルは0080サウンドトラックです。
またすみません……
「食卓におけるカノン」の続き。
引き続き捏造しまくりでお送りしております。ご注意下さい。
地上での出来事その1
ロックオン、ティエリアの扱い方を学ぶ
またすみません……
「食卓におけるカノン」の続き。
引き続き捏造しまくりでお送りしております。ご注意下さい。
地上での出来事その1
ロックオン、ティエリアの扱い方を学ぶ
+ + + + + + + + + +
ニール・ディランディがロックオン・ストラトスとなって宇宙に上がり2ヶ月が過ぎた頃、彼はもう一度地上に舞い戻ることになった。お払い箱ではない。念のため。
これから数週間に渡り、デュナメスとヴァーチェ(ティエリアの搭乗機だ)の地上における耐久試験を実施することになっている。スケジュールを確認すると、地上での高機動模擬訓練も予定されている。相当に広いエリアでないとこんな試験はできないはずだから、どこでやるんだとイアンに尋ねてみるも行ってみればわかるとのこと。
「それでこれか・・・・・・」
たどり着いた場所で、ロックオンは呆然とつぶやいた。
島である。それも飛び切り遠くにあって無人島的な。
そこに大きなコンテナが数台設置されてある。カモフラージュされてあるが、この島が個人の所有物だというからこの世界は分からない。確かにこれだけ陸地から離れた場所にあればまず見つからないだろうし、太陽炉から発生される粒子はレーダー、ソナーその他の探索システムを無効化するという特徴があるため、目視以外では観測されない。気をつけねばならないのは周囲を航行する長距離輸送船、および航空機、偵察衛星のみである。運行状況はすべてヴェーダによって把握されているそうで、スケジュールに組み込まれている休息日はこれらの通過が多い日なのだろう。
「痕跡を残さないなら海上ってか? まぁ一理あるな」
肩に負った荷物を担ぎなおしながら、ロックオンはそっと己の後ろを伺った。
同じように荷物を手に立っているティエリア・アーデは、先程から一言も発していない。先程、というかリニアを降りて地上に降り立ってからになるが、普段から表情が伺い辛いのに拍車をかけて無表情になっている。
ティエリアは今回初めての地上降下になる。宇宙生まれの宇宙育ち、地上はデータでしか知らないという新人類と言って良い境遇で、ロックオンは暫定後見人のモレノ医師から様子を伺うよう依頼されていた。宇宙育ちとはいえ、医務室などの重力付加区画もあるのだから全くの初体験ではないはずである。それとなく歩行などにも目を配っていたが、問題はなさそうだった。時折大きく足を踏み出すという動作が見られたが。
耐久試験および機動訓練の監督となっているイアン・ヴァスティが両手を打って注意を引く。今回はパイロット他に数名の整備スタッフが同行しているため、それなりに大所帯だ。一気に移動するのは目につくので、数回に分けてこちらに到着することになっている。
「じゃ、荷物を置いてから簡単に打ち合わせするぞ。機体は明日こちらに届く。それから試験開始だ」
「そういや、機体はどうやって運ぶんだ?」
「CBのエージェントを舐めるなよ。今回はコロニーからの廃材やらを積んだ貨物扱いでリニアを使って下ろした。重量さえクリアしておけば目はつけられんよ。帰りも同じだな」
他に質問は、と聞くイアンにコンテナの事を尋ねようとした矢先にどさり、という重い音がしたので振り返る。どうやらティエリアが荷物を投げ出したようだった。滅多に見ない乱暴さで荷物を扱うティエリアに皆驚いたが、イアンはリニアから降りての移動で疲れているのだろうと察したらしくコンテナの中へ移動するように言った。
島にきてから三日目。スケジュールは順調に進んでいる。
昨日行われた高機動運用試験をふまえて整備スタッフが総出で整備点検に入っているため、機体に搭乗しての訓練は行われないが、地上活動による負荷を加えた機体制御プログラムを構築するのが今日のパイロットの仕事だった。
一段落ついたので頃合いを見て食事をするためにデュナメスのコンテナから共有スペースに来たのだが、そこで珍しくプレートの食事を口にしているティエリアと遭遇した。たまたまゼリーが無かったのではないかとも思うけれど。
「お疲れさん。調子はどうだ?」
「問題ありません。あなたこそ気をつけるべきでしょう、先日の入力ミスは簡単なところでしたよ」
一言多い上に相変わらずの素っ気なさ。少しはコミュニケーションのスキルを磨いた方が良いのではと心配になるほどだ。ロックオンがフードウォーマーからプレートを取り出して着席すると同時にティエリアが食事を済ませたようで、立ち上がり移動していく。特に用事もなかったので、そのまま見送って食事を始めようとしたそのとき。
がしゃん、と大きな物音がした。
口に運ぶ寸前だったロックオンは思わずフォークを取り落としてしまう。プレートに落下してトマトソースに絡んだフォークを呆然と見やってから、この騒音の元凶であろうティエリアに視線を向けた。最近苛立っているのか、荷物を放り出すわやたらと大きな音を立てているわのティエリアである。今までは特に気にしてなかったが、こうも続くと公害だ。モノに当たるのは良くないと注意するのもあり、口を開く。
「おい、ティエリア」
「なんです」
「なんだ、じゃねえ!」
モノに当たるのは止めたらどうだと言うと、ティエリアは何を言われているのか分からないというふうに首を傾げた。そしてまた手にしたものを机に叩きつける(という表現が一番近い)。もう一度大きな音がして思わず首をすくめたロックオンは、態とやってんのかと睨み付けるが、ティエリアはそれに気づいた感もなく、首を傾げつつ拾い上げ、を繰り返している。ためつすがめつ、といった様子に気がついた。
(加減が分かってないのか?)
そう考えると、ここ数日のティエリアの様子が理解できた。無重力、または低重力下での生活が長いティエリアは、恐らく常に重力下にあって自然と覚えるモノに対する力加減が分かっていない。荷物も放り出したという意識がなかったのだろうし、プレートを置く動作にしても「静かに置く」ということ自体が理解の範疇外にある。
まさかとは思うが、「重力に慣れていない」人間がここにいた。
どのような環境で育ってきたのかと思う。人間が持つ当たりまえの感覚として与えられてきたものをティエリアは持っていない、理解できていない。幼子のように繰り返す動作が胸を打った。
ロックオンはそっとティエリアの横に立ち、プレートを持つ手に己のものを添えた。細くて小さな手だ。狙撃手である自分は同じ年代の男性よりも手が大きいのだから比べるのもおかしいかもしれないが。急に手を重ねられて驚き、こちらを伺うティエリアを見てから、ゆっくりと手を下ろす。かすかな音をたててプレートが机に触れる。それに気づいたティエリアが視線をプレートに戻し、ロックオンは同じ動作を数回繰り返してから手を離した。飲み込みは早いから何回か手本を見せれば対応するだろうと踏んだのだが、ティエリアはすぐに加減を覚えたようだ。
椅子に座り直してそっと様子を伺う。プレートを両手で持ち、頷きながら動作を繰り返す様子が可愛らしく見え、思わず笑みがこぼれた。小さな子供に教えているようだ、小学校の先生でもいけるかなと考えながらフォークを拾いあげる。もう大丈夫だろう。
フォークを拭ってから食事を再開、それなりのボリュームがあるメインディッシュ(鶏肉とトマトの煮込み)を口に運びながら食事後のプランを練り上げる。プログラムが完成したらおやっさんに確認してもらって。明日は兵装運用に関する試験だが、ここで一つ提案したいことがあるな・・・・・・などと頭を巡らせていると、こちらを伺っているティエリアに気がついた。まだ退室していなかったらしい。
どうかしたか、と問いかけるとプレートを置き(見事な学習能力だ)、地上での動きの参考になったと言葉を返してきた。物言いからは分かりづらいが、どうやら礼を言っているつもりらしい。おぉ、と声を出すとそれが返事だと判断したのだろう、そのまま退出していった。降下前ミーティングの時とやたら態度が違う。助言を拒絶するとまではいかないが、素直に受け入れる様をみたのは初めてだった。
これは予想だが、他に誰もいない状態なのが効果的であったのだろう。ティエリアの性格では、他者の目が多くあるところで指導されるのを快く思わない、良しとしないのだと分かった。
(プライドか? なんとまぁ・・・・・・)
今度から何かを伺う場合などは人目が少ない場所を選んだ方が良さそうだ。付き合い方さえ間違わなければ、助言は受け入れるのだから。
「・・・・・・うまくやれたじゃないか、ニール」
これから数週間に渡り、デュナメスとヴァーチェ(ティエリアの搭乗機だ)の地上における耐久試験を実施することになっている。スケジュールを確認すると、地上での高機動模擬訓練も予定されている。相当に広いエリアでないとこんな試験はできないはずだから、どこでやるんだとイアンに尋ねてみるも行ってみればわかるとのこと。
「それでこれか・・・・・・」
たどり着いた場所で、ロックオンは呆然とつぶやいた。
島である。それも飛び切り遠くにあって無人島的な。
そこに大きなコンテナが数台設置されてある。カモフラージュされてあるが、この島が個人の所有物だというからこの世界は分からない。確かにこれだけ陸地から離れた場所にあればまず見つからないだろうし、太陽炉から発生される粒子はレーダー、ソナーその他の探索システムを無効化するという特徴があるため、目視以外では観測されない。気をつけねばならないのは周囲を航行する長距離輸送船、および航空機、偵察衛星のみである。運行状況はすべてヴェーダによって把握されているそうで、スケジュールに組み込まれている休息日はこれらの通過が多い日なのだろう。
「痕跡を残さないなら海上ってか? まぁ一理あるな」
肩に負った荷物を担ぎなおしながら、ロックオンはそっと己の後ろを伺った。
同じように荷物を手に立っているティエリア・アーデは、先程から一言も発していない。先程、というかリニアを降りて地上に降り立ってからになるが、普段から表情が伺い辛いのに拍車をかけて無表情になっている。
ティエリアは今回初めての地上降下になる。宇宙生まれの宇宙育ち、地上はデータでしか知らないという新人類と言って良い境遇で、ロックオンは暫定後見人のモレノ医師から様子を伺うよう依頼されていた。宇宙育ちとはいえ、医務室などの重力付加区画もあるのだから全くの初体験ではないはずである。それとなく歩行などにも目を配っていたが、問題はなさそうだった。時折大きく足を踏み出すという動作が見られたが。
耐久試験および機動訓練の監督となっているイアン・ヴァスティが両手を打って注意を引く。今回はパイロット他に数名の整備スタッフが同行しているため、それなりに大所帯だ。一気に移動するのは目につくので、数回に分けてこちらに到着することになっている。
「じゃ、荷物を置いてから簡単に打ち合わせするぞ。機体は明日こちらに届く。それから試験開始だ」
「そういや、機体はどうやって運ぶんだ?」
「CBのエージェントを舐めるなよ。今回はコロニーからの廃材やらを積んだ貨物扱いでリニアを使って下ろした。重量さえクリアしておけば目はつけられんよ。帰りも同じだな」
他に質問は、と聞くイアンにコンテナの事を尋ねようとした矢先にどさり、という重い音がしたので振り返る。どうやらティエリアが荷物を投げ出したようだった。滅多に見ない乱暴さで荷物を扱うティエリアに皆驚いたが、イアンはリニアから降りての移動で疲れているのだろうと察したらしくコンテナの中へ移動するように言った。
島にきてから三日目。スケジュールは順調に進んでいる。
昨日行われた高機動運用試験をふまえて整備スタッフが総出で整備点検に入っているため、機体に搭乗しての訓練は行われないが、地上活動による負荷を加えた機体制御プログラムを構築するのが今日のパイロットの仕事だった。
一段落ついたので頃合いを見て食事をするためにデュナメスのコンテナから共有スペースに来たのだが、そこで珍しくプレートの食事を口にしているティエリアと遭遇した。たまたまゼリーが無かったのではないかとも思うけれど。
「お疲れさん。調子はどうだ?」
「問題ありません。あなたこそ気をつけるべきでしょう、先日の入力ミスは簡単なところでしたよ」
一言多い上に相変わらずの素っ気なさ。少しはコミュニケーションのスキルを磨いた方が良いのではと心配になるほどだ。ロックオンがフードウォーマーからプレートを取り出して着席すると同時にティエリアが食事を済ませたようで、立ち上がり移動していく。特に用事もなかったので、そのまま見送って食事を始めようとしたそのとき。
がしゃん、と大きな物音がした。
口に運ぶ寸前だったロックオンは思わずフォークを取り落としてしまう。プレートに落下してトマトソースに絡んだフォークを呆然と見やってから、この騒音の元凶であろうティエリアに視線を向けた。最近苛立っているのか、荷物を放り出すわやたらと大きな音を立てているわのティエリアである。今までは特に気にしてなかったが、こうも続くと公害だ。モノに当たるのは良くないと注意するのもあり、口を開く。
「おい、ティエリア」
「なんです」
「なんだ、じゃねえ!」
モノに当たるのは止めたらどうだと言うと、ティエリアは何を言われているのか分からないというふうに首を傾げた。そしてまた手にしたものを机に叩きつける(という表現が一番近い)。もう一度大きな音がして思わず首をすくめたロックオンは、態とやってんのかと睨み付けるが、ティエリアはそれに気づいた感もなく、首を傾げつつ拾い上げ、を繰り返している。ためつすがめつ、といった様子に気がついた。
(加減が分かってないのか?)
そう考えると、ここ数日のティエリアの様子が理解できた。無重力、または低重力下での生活が長いティエリアは、恐らく常に重力下にあって自然と覚えるモノに対する力加減が分かっていない。荷物も放り出したという意識がなかったのだろうし、プレートを置く動作にしても「静かに置く」ということ自体が理解の範疇外にある。
まさかとは思うが、「重力に慣れていない」人間がここにいた。
どのような環境で育ってきたのかと思う。人間が持つ当たりまえの感覚として与えられてきたものをティエリアは持っていない、理解できていない。幼子のように繰り返す動作が胸を打った。
ロックオンはそっとティエリアの横に立ち、プレートを持つ手に己のものを添えた。細くて小さな手だ。狙撃手である自分は同じ年代の男性よりも手が大きいのだから比べるのもおかしいかもしれないが。急に手を重ねられて驚き、こちらを伺うティエリアを見てから、ゆっくりと手を下ろす。かすかな音をたててプレートが机に触れる。それに気づいたティエリアが視線をプレートに戻し、ロックオンは同じ動作を数回繰り返してから手を離した。飲み込みは早いから何回か手本を見せれば対応するだろうと踏んだのだが、ティエリアはすぐに加減を覚えたようだ。
椅子に座り直してそっと様子を伺う。プレートを両手で持ち、頷きながら動作を繰り返す様子が可愛らしく見え、思わず笑みがこぼれた。小さな子供に教えているようだ、小学校の先生でもいけるかなと考えながらフォークを拾いあげる。もう大丈夫だろう。
フォークを拭ってから食事を再開、それなりのボリュームがあるメインディッシュ(鶏肉とトマトの煮込み)を口に運びながら食事後のプランを練り上げる。プログラムが完成したらおやっさんに確認してもらって。明日は兵装運用に関する試験だが、ここで一つ提案したいことがあるな・・・・・・などと頭を巡らせていると、こちらを伺っているティエリアに気がついた。まだ退室していなかったらしい。
どうかしたか、と問いかけるとプレートを置き(見事な学習能力だ)、地上での動きの参考になったと言葉を返してきた。物言いからは分かりづらいが、どうやら礼を言っているつもりらしい。おぉ、と声を出すとそれが返事だと判断したのだろう、そのまま退出していった。降下前ミーティングの時とやたら態度が違う。助言を拒絶するとまではいかないが、素直に受け入れる様をみたのは初めてだった。
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