タイトルはまたまた0080からです
ほんとうしつこくてすみませ・・・・・・;;
「うまくやれたら」の続き
初めてのかたは、「あの丘を越えろ」からご覧下さい。一応?続き物です。
このロックオンは1期、つまりニール・ディランディです。
さらに捏造満載でお送りしております。ご注意下さい。
さらに前の更新から一月以上経ってて話の内容忘れ
地上での出来事その2
ほんとうしつこくてすみませ・・・・・・;;
「うまくやれたら」の続き
初めてのかたは、「あの丘を越えろ」からご覧下さい。一応?続き物です。
このロックオンは1期、つまりニール・ディランディです。
さらに捏造満載でお送りしております。ご注意下さい。
地上での出来事その2
+ + + + + + + + + +
ニール・ディランディがロックオン・ストラトスとなって2ヶ月が過ぎ、宇宙から出戻って来て1ヶ月が経っていた。繰り返し言うが、お払い箱ではない。念のため。
地上での静強度試験、疲労負荷試験、各種兵装運用試験、高起動下での強度・疲労負荷試験、模擬戦闘等々。地上での運用プログラムの検討は逐一ヴェーダにファイル報告されており、あわせて宇宙にいるスメラギとイアンを交えての「口頭報告」はヴェーダへのファイル報告とほぼ同程度の頻度で行われていた。口頭試問を受けているような心地になるが、直接ディスカッションをするほうが決済は早い。近い将来にロックオンが所属するチームのボスになる彼女は他にも仕事があるはずだが、ガンダムの運用に関しての報告に妥協しなかった。
必ず己に報告をすることを義務付けたので、余計な手間だとティエリアは意見を発していたが呆気なく却下された。客観的に判断するには確かにファイルデータを参照するほうが良いかもしれないが、ガンダムには人間が乗っているのだと主張されたらしい。感覚をデータで判断するのは難しいという。
半永久的に稼働し続ける太陽炉の恩恵でエネルギー不足という点においては全く考慮しなくてもよいという環境で、試験は繰り返し行われるためにどうやら機体運用だけでなく、マイスターのメンタルバランスの方も検討課題に入っているようだった。
「ハリケーンですか」
「そうだ。ヴェーダの予報ではこの島も暴風圏に入るようだから、極限環境としては最適だろう? 丁度良い時に来てくれた」
浮かれた口調で話すイアンとティエリアの会話を聞いてヴェーダは天気予報もやんのかと突っ込みたくなったロックオンだが、横に座っているティエリアに何を言われるかわからないので黙っておく。以前不用意に発言してしまったためにティエリアに倍返しされたのだった。
宇宙と地球での運用において、最も評価に違いが見られるのは重力の影響であるがもう一つ、極限環境においての評価も重要であった。気温という視点から見れば極限状態とも言えるのだが、宇宙には天候というものがない。機体は宇宙で製造され様々な試験はコロニー内、若しくは採掘衛星に極秘に建造した基地内で行われていたが、天候を「作り出す」設備となればコロニー1つをそのまま利用したとしても可能かどうか。さらにコロニーという足のつきやすい施設を利用するとなれば各陣営の査察の目をくぐり抜けるのも一苦労ということになり、そのような手間をかけるのであれば地上で実施した方が良いという結論で、今回の地上試験では極限環境下での評価も行われることになっていた。
スケジュールは順調に消化、評価結果も予想された諸元値から大きく外れることもなく、さらに渡りに船でハリケーンがやってくるので揉み手で喜んでいるイアンと、早速手元の端末で予報円を確認しているティエリアを眺めてからロックオンはスクリーンのスメラギに視線を移す。
「ハリケーンのまっただ中でもミッション遂行するつもりか?」
「必要があれば」
「おいおいマジかよ。ハリケーンで敵さんも出てきやしないって」
勘弁してくれと両手を上げるロックオンに、覗き込んでいた端末から顔をあげたティエリアは鋭い視線を彼に向ける。気付いたロックオンがしまったなと表情に出す前に、ティエリアが口を開いた。
「……ロックオン・ストラトス」
「なんだティエリア?」
「我々はヴェーダの推奨するミッションを忠実に遂行するマイスターだ。余計な事を言うな」
「余計な、って……」
「不満があるのなら、ガンダムを降りればいい。ヴェーダはすぐに忠実なマイスターを選出するだろう」
「ちょっとティエリア!」
冗談を掛け合ったつもりだったのだがティエリアはそうは受け取らなかったらしく、いつも以上にきつい物言いをする。慌てたスメラギが窘めたが、恐らく本人は当然のことを言ったのだという認識しかしていないであろう表情でロックオンを睨み付けていた。
最近は問題なく過ごせていたのだが、ここに来て失敗したなと内心苦笑しながら悪かったよと声を掛ける。それも気に喰わなかったのか、ティエリアは試験に関するスケジュールは後ほどヴェーダから閲覧しますと言い置いて席を外してしまった。
「……やっちまったな」
「まだ冗談を判断できないのね……」
「難しい年頃だしなぁ……」
良い年をした大人3人が未成年の子どもを扱いかねてため息をついている、という光景は、なかなか見られたもんじゃないよなと苦笑した。
明けて翌日、「ヴェーダの確実天気予報」(ロックオン命名)通りにハリケーンが近づいてきつつある中、第六ポイントに滞在中のマイスター及びテクノスタッフ全員が格納庫に集められ(スタッフ全員を集める広さをもつ場所はここくらいだ)試験スケジュールの確認が行われた。発進シークエンスから徹底的に指示が出され、デュナメスは地上コンテナから、ヴァーチェは海中コンテナから発進することを伝えられる。その後の雨中・暴風などの極限下環境試験の概要説明があり、今回は無線の完全封鎖が不可能であるという判断(船舶からの緊急無線を遮断する可能性がある為)から符牒の申し合わせが行われた。各部署に別れて詳細な打ち合わせを行う前に、総責任者のイアン・ヴァスティが両手を打って注意を引く。
「さて諸君、言わずとも分かっているだろうが。……外に出るなよ?」
ハリケーン珍しさに見物なんぞするんじゃないぞとの言外の注意にスタッフ全員が笑って答える。ロックオンも幼い頃、嵐がくる度に母親から注意を促された事を思い出して笑った。時間合わせを済ませてスタッフが各部署に別れる為に散っていき、閑散とした格納庫でティエリアを探すと、相変わらずの無表情で端末を覗き込んでいる。話は聞いていたはずだがまだご機嫌は戻っていないようで、端末で確認するから一切の会話を拒否するとの態度を押し出している様が可笑しくてならない。しかしながらそういう訳にもいかないので、大人としてこちらから声をかけてやる事にする。
「タイムテーブルは確認したか?」
「……海中コンテナには1230に移動、開始時刻は1300。強風域から試験開始、30分後に暴風域に移動して試験続行。全項目の終了時刻は1400を予定」
「了解だ。今回は特にハードな操縦だから気をつけろよ」
「言われるまでもありません」
「ハリケーン甘く見んなよ? どうせお前一度も体験した事無いだろうが」
そう言うとティエリアは不機嫌そうに顔をしかめて良い機会です、と言い放ったので、意外と気にしていたのだなと思ったのだが、まさかその後騒動が持ち上がるとはこの時点では予想していなかったロックオンだった。
『こちらマスター、開幕だ。プリマを出せ』
「02了解」
『04了解』
イアンからの発進命令とティエリアの応答を聞きながらロックオンは機体をコンテナから発進させる。ゲートが開き、太陽炉の出力があがる。ゆっくりと浮上するが、いつもと違うのは周囲に吹き荒れる風だ。機体操作を失わないように操縦レバーを握りしめて慎重に押し上げる。10分程前に強風域に達した第六ポイントは、風速が15m/sを超えておりホバリング状態で姿勢を維持するのは相当に骨が折れた。発進30分前に海底コンテナへ移動したティエリアが操るヴァーチェが浮上するのを待って、ロックオン操るデュナメスはハリケーンの進行方向を北にすると西側、所謂「可航半円」に向かう。逆にヴァーチェは東側、「危険半円」に向かう。これは両機の装甲からイアンが決定したもので、それぞれ別行動で試験を行う事になっていた。
「02よりマスター。オンステージ。ドレス250、ヒール1000」
『04よりマスター。オンステージ。ドレス270、ヒール1200』
予定ポイントに到着して速度と高度を報告したロックオンは、符牒とはいえティエリアからドレスだのヒールだのという言葉を聞くのは違和感があるなとこっそり笑ったが、突風に機体を煽られて慌てて体勢を立て直す。ロックオンとて強風の中機体を操縦するという経験を持たないのだ、全く未知の現象を体験しているティエリアは相当難儀しているだろう。
イアンより帰投命令を受けてコンテナへ戻って来たロックオンは、コンテナハッチが閉じるのをモニターで確認してから大きく息を吐いた。第六ポイントが暴風域に入る前に帰投するスケジュールであった為短時間で多くの項目をチェックする必要があったのだが、無事に帰投できて何よりだ。発進は海中だったヴァーチェも陸上コンテナに帰投しているから、様子を伺ってみることにする。一応、モレノ医師に初体験の地上生活のフォローを頼まれている身なのだ。
コクピットから降りて周囲に集まるテクノスタッフの労いを受けながらデュナメスを見上げる。特に目立った損傷は無いようだが、機体をモニターしていたスタッフにはこれからもまだ仕事があるので、邪魔にならないように早々に移動した。
デブリーフィングの内容をつらつらと考えながらパイロットミーティングルームに入ると、意外な事にティエリアはまだ到着していないようだった。
「ティエリアは?」
「俺一人だ。まだ来てないのか?」
「あぁ、珍しいな。ヴァーチェが先に到着していたのに」
待ち構えていたイアンが不思議そうに首を傾げる。ミッションを終えれば真っ先に報告するティエリアがまだ来ていない。不意に、虫の知らせ、というものがロックオンに降りて来た。
「あいつ、まさか、外に」
「……本気か?」
「あ……っの野郎!」
いくら未体験だからってバカ正直に外に出る奴があるかと罵りながら、ロックオンはコンテナの通用口へ向かう。デュナメスとヴァーチェが帰投したコンテナは別だがミーティングルームとしたこの部屋へ向かう途中に、外へ出られるドアがあった。通りすがりにちょっと除いてみようなどという考えに違いない、間違いなくそこから外に出るはずで、ある意味分かりやすい行動を取るから予想しやすい進路だ。
普段はパスロックを掛けてあるがティエリアにとっては何の意味もない。あっさりと解除してしまうだろうから、取り返しのつかないことになる前にとっ捕まえなければと足を速める。案の定、格納庫からミーティングルームへの道すがらにある外部通用口の前に立つティエリアを発見する。ヘルメットを左に抱えてパスコードを解除しているようだ。間に合ったとロックオンは大声を出した。
「おい! ティエリア!」
「なんですか」
「だからなんですか、じゃねえよ! 何やってるんだ!」
「何とは? 俺はハリケーンを観察しようと思っただけだ」
「この大馬鹿野郎! おやっさんの話を聞いてなかったのか!?」
馬鹿野郎としか言いようがなかったロックオンは、懲りずに外へ出て行こうとするティエリアの腕を掴んで引き戻し、ドア横に設置されてあるパネルに触れようとしていた細い指が空ぶる。邪魔をするなと憤慨して抗議するのを無視してまで連れて行こうとするが、これまた抵抗して暴れるものだから大騒ぎになってしまった。
何とか追いついたイアンのほか、騒ぎを聞きつけやってきたテクノスタッフが見守る中での離せ離さないの応酬(後ほどイアンに修羅場のようだったと揶揄された)が続き、とうとう面倒くせぇと叫んだロックオンは、ドアの開閉ボタンを引っぱたいた。
圧縮された空気が排出されてドアがスライドする。途端、ティエリアの身体を吹き飛ばすかというほどの空気が一気に押し寄せ、同時に身体に水が叩きつけられた。思わず顔を腕で覆ったが空気の勢いも水の量も変わらない。ものすごい轟音と押し寄せる空気に足を取られたところで後ろから肩を掴まれた。振り返り見上げると己と同じように頭から水を被ったロックオンが片手を壁について身を支えながら鋭い目でティエリアを見ている。
「……わかったか」
「……了解した」
「良し」
「良しじゃない! 何やっとるんだバカ共が!」
という怒声と共に解放されたままのドアが閉じられ、周囲に静寂がもどる。ティエリアが顔を覆っていた腕を下ろして見渡すと、同様に全身が濡れてしまったロックオンと、普段の温厚そうな顔を思い切りしかめたイアン・ヴァスティがドアの操作パネルの前にいる。ドア付近は天井、床、壁と全てが水浸しで、それどころか木の葉や枝などが散乱している。全く気が付かなかったが、空気と共に吹き込んできていたらしい。いつの間にか手放していたヘルメットを押し付けられ、とっとと着替えて来いと二人ともそろって追い払われた。お互い一言も会話はなく、そのままあてがわれた部屋へ向かう。
濡れてしまったパイロットスーツを脱ぐのに一苦労したが、シャワーを浴びて身を整え幾分かすっきりとした心地でミーティングルームに赴いた二人に対して、イアンは何も言わずにモップとバケツを指示した。
「……おやっさん……俺ぁプライマリのガキじゃぁねぇんだがな」
「だからこそ自主的にってやつだ。わしは道具を貸してやっているだけでね」
「……」
珍しく(本当に!)全く苦情を申し立てずに道具を手にしたティエリアの手前、いい大人がこれ以上愚痴をこぼすわけにも行かず、変わりに盛大なため息をついてから(これでも十分大人気なかったが)モップを担いで現場に向かった。
それでも大きな枝や葉などは拾って処分してくれていたらしく濡れた廊下を拭きあげることのみだったので、とりあえず片っ端からモップを動かしていったものの、やはりため息は出る。始めの「大人の態度」とやらは遠くに放り投げて、ロックオンはぼやいた。
「この歳で罰掃除かよ……」
「……」
「何とかいえって!」
もとはと言えばお前のせいだと噛み付くと、ティエリアはちらりと視線をむけて口を開いた。
「無駄口を叩いている間があれば手を動かせ。そうすれば早く終わる」
「……」
もはや何をも言う気になれず、黙々とモップを動かす。モップで拭き取るのみと言えど、これがかなりの広範囲であったために結局は1時間ほど利用しての作業となった。
「ま、お前さんにとってはハリケーンを体感できたうえに、言いつけを守らないとこういう目に合うことも学べてよかったじゃねえか」
「確かに貴重な体験だった。濡れるのはいい心地ではない。全く地上というものは」
まったくろくなことがない。早く宇宙へ帰りたいというティエリアに、嫌味のつもりで発した言葉だったのだが、嵐があければ今度は散歩に連れて行ってやろうかとロックオンは考えた。確かに地上は難儀かもしれない、だが嵐が連れてくるのはそれだけではないのだ。
澄んだ空気と晴れ渡る空、河を渡って木立を抜けて。
彼は結局こう答えた。
「……いや、真面目に答えられても困るんだが」
地上での静強度試験、疲労負荷試験、各種兵装運用試験、高起動下での強度・疲労負荷試験、模擬戦闘等々。地上での運用プログラムの検討は逐一ヴェーダにファイル報告されており、あわせて宇宙にいるスメラギとイアンを交えての「口頭報告」はヴェーダへのファイル報告とほぼ同程度の頻度で行われていた。口頭試問を受けているような心地になるが、直接ディスカッションをするほうが決済は早い。近い将来にロックオンが所属するチームのボスになる彼女は他にも仕事があるはずだが、ガンダムの運用に関しての報告に妥協しなかった。
必ず己に報告をすることを義務付けたので、余計な手間だとティエリアは意見を発していたが呆気なく却下された。客観的に判断するには確かにファイルデータを参照するほうが良いかもしれないが、ガンダムには人間が乗っているのだと主張されたらしい。感覚をデータで判断するのは難しいという。
半永久的に稼働し続ける太陽炉の恩恵でエネルギー不足という点においては全く考慮しなくてもよいという環境で、試験は繰り返し行われるためにどうやら機体運用だけでなく、マイスターのメンタルバランスの方も検討課題に入っているようだった。
「ハリケーンですか」
「そうだ。ヴェーダの予報ではこの島も暴風圏に入るようだから、極限環境としては最適だろう? 丁度良い時に来てくれた」
浮かれた口調で話すイアンとティエリアの会話を聞いてヴェーダは天気予報もやんのかと突っ込みたくなったロックオンだが、横に座っているティエリアに何を言われるかわからないので黙っておく。以前不用意に発言してしまったためにティエリアに倍返しされたのだった。
宇宙と地球での運用において、最も評価に違いが見られるのは重力の影響であるがもう一つ、極限環境においての評価も重要であった。気温という視点から見れば極限状態とも言えるのだが、宇宙には天候というものがない。機体は宇宙で製造され様々な試験はコロニー内、若しくは採掘衛星に極秘に建造した基地内で行われていたが、天候を「作り出す」設備となればコロニー1つをそのまま利用したとしても可能かどうか。さらにコロニーという足のつきやすい施設を利用するとなれば各陣営の査察の目をくぐり抜けるのも一苦労ということになり、そのような手間をかけるのであれば地上で実施した方が良いという結論で、今回の地上試験では極限環境下での評価も行われることになっていた。
スケジュールは順調に消化、評価結果も予想された諸元値から大きく外れることもなく、さらに渡りに船でハリケーンがやってくるので揉み手で喜んでいるイアンと、早速手元の端末で予報円を確認しているティエリアを眺めてからロックオンはスクリーンのスメラギに視線を移す。
「ハリケーンのまっただ中でもミッション遂行するつもりか?」
「必要があれば」
「おいおいマジかよ。ハリケーンで敵さんも出てきやしないって」
勘弁してくれと両手を上げるロックオンに、覗き込んでいた端末から顔をあげたティエリアは鋭い視線を彼に向ける。気付いたロックオンがしまったなと表情に出す前に、ティエリアが口を開いた。
「……ロックオン・ストラトス」
「なんだティエリア?」
「我々はヴェーダの推奨するミッションを忠実に遂行するマイスターだ。余計な事を言うな」
「余計な、って……」
「不満があるのなら、ガンダムを降りればいい。ヴェーダはすぐに忠実なマイスターを選出するだろう」
「ちょっとティエリア!」
冗談を掛け合ったつもりだったのだがティエリアはそうは受け取らなかったらしく、いつも以上にきつい物言いをする。慌てたスメラギが窘めたが、恐らく本人は当然のことを言ったのだという認識しかしていないであろう表情でロックオンを睨み付けていた。
最近は問題なく過ごせていたのだが、ここに来て失敗したなと内心苦笑しながら悪かったよと声を掛ける。それも気に喰わなかったのか、ティエリアは試験に関するスケジュールは後ほどヴェーダから閲覧しますと言い置いて席を外してしまった。
「……やっちまったな」
「まだ冗談を判断できないのね……」
「難しい年頃だしなぁ……」
良い年をした大人3人が未成年の子どもを扱いかねてため息をついている、という光景は、なかなか見られたもんじゃないよなと苦笑した。
明けて翌日、「ヴェーダの確実天気予報」(ロックオン命名)通りにハリケーンが近づいてきつつある中、第六ポイントに滞在中のマイスター及びテクノスタッフ全員が格納庫に集められ(スタッフ全員を集める広さをもつ場所はここくらいだ)試験スケジュールの確認が行われた。発進シークエンスから徹底的に指示が出され、デュナメスは地上コンテナから、ヴァーチェは海中コンテナから発進することを伝えられる。その後の雨中・暴風などの極限下環境試験の概要説明があり、今回は無線の完全封鎖が不可能であるという判断(船舶からの緊急無線を遮断する可能性がある為)から符牒の申し合わせが行われた。各部署に別れて詳細な打ち合わせを行う前に、総責任者のイアン・ヴァスティが両手を打って注意を引く。
「さて諸君、言わずとも分かっているだろうが。……外に出るなよ?」
ハリケーン珍しさに見物なんぞするんじゃないぞとの言外の注意にスタッフ全員が笑って答える。ロックオンも幼い頃、嵐がくる度に母親から注意を促された事を思い出して笑った。時間合わせを済ませてスタッフが各部署に別れる為に散っていき、閑散とした格納庫でティエリアを探すと、相変わらずの無表情で端末を覗き込んでいる。話は聞いていたはずだがまだご機嫌は戻っていないようで、端末で確認するから一切の会話を拒否するとの態度を押し出している様が可笑しくてならない。しかしながらそういう訳にもいかないので、大人としてこちらから声をかけてやる事にする。
「タイムテーブルは確認したか?」
「……海中コンテナには1230に移動、開始時刻は1300。強風域から試験開始、30分後に暴風域に移動して試験続行。全項目の終了時刻は1400を予定」
「了解だ。今回は特にハードな操縦だから気をつけろよ」
「言われるまでもありません」
「ハリケーン甘く見んなよ? どうせお前一度も体験した事無いだろうが」
そう言うとティエリアは不機嫌そうに顔をしかめて良い機会です、と言い放ったので、意外と気にしていたのだなと思ったのだが、まさかその後騒動が持ち上がるとはこの時点では予想していなかったロックオンだった。
『こちらマスター、開幕だ。プリマを出せ』
「02了解」
『04了解』
イアンからの発進命令とティエリアの応答を聞きながらロックオンは機体をコンテナから発進させる。ゲートが開き、太陽炉の出力があがる。ゆっくりと浮上するが、いつもと違うのは周囲に吹き荒れる風だ。機体操作を失わないように操縦レバーを握りしめて慎重に押し上げる。10分程前に強風域に達した第六ポイントは、風速が15m/sを超えておりホバリング状態で姿勢を維持するのは相当に骨が折れた。発進30分前に海底コンテナへ移動したティエリアが操るヴァーチェが浮上するのを待って、ロックオン操るデュナメスはハリケーンの進行方向を北にすると西側、所謂「可航半円」に向かう。逆にヴァーチェは東側、「危険半円」に向かう。これは両機の装甲からイアンが決定したもので、それぞれ別行動で試験を行う事になっていた。
「02よりマスター。オンステージ。ドレス250、ヒール1000」
『04よりマスター。オンステージ。ドレス270、ヒール1200』
予定ポイントに到着して速度と高度を報告したロックオンは、符牒とはいえティエリアからドレスだのヒールだのという言葉を聞くのは違和感があるなとこっそり笑ったが、突風に機体を煽られて慌てて体勢を立て直す。ロックオンとて強風の中機体を操縦するという経験を持たないのだ、全く未知の現象を体験しているティエリアは相当難儀しているだろう。
イアンより帰投命令を受けてコンテナへ戻って来たロックオンは、コンテナハッチが閉じるのをモニターで確認してから大きく息を吐いた。第六ポイントが暴風域に入る前に帰投するスケジュールであった為短時間で多くの項目をチェックする必要があったのだが、無事に帰投できて何よりだ。発進は海中だったヴァーチェも陸上コンテナに帰投しているから、様子を伺ってみることにする。一応、モレノ医師に初体験の地上生活のフォローを頼まれている身なのだ。
コクピットから降りて周囲に集まるテクノスタッフの労いを受けながらデュナメスを見上げる。特に目立った損傷は無いようだが、機体をモニターしていたスタッフにはこれからもまだ仕事があるので、邪魔にならないように早々に移動した。
デブリーフィングの内容をつらつらと考えながらパイロットミーティングルームに入ると、意外な事にティエリアはまだ到着していないようだった。
「ティエリアは?」
「俺一人だ。まだ来てないのか?」
「あぁ、珍しいな。ヴァーチェが先に到着していたのに」
待ち構えていたイアンが不思議そうに首を傾げる。ミッションを終えれば真っ先に報告するティエリアがまだ来ていない。不意に、虫の知らせ、というものがロックオンに降りて来た。
「あいつ、まさか、外に」
「……本気か?」
「あ……っの野郎!」
いくら未体験だからってバカ正直に外に出る奴があるかと罵りながら、ロックオンはコンテナの通用口へ向かう。デュナメスとヴァーチェが帰投したコンテナは別だがミーティングルームとしたこの部屋へ向かう途中に、外へ出られるドアがあった。通りすがりにちょっと除いてみようなどという考えに違いない、間違いなくそこから外に出るはずで、ある意味分かりやすい行動を取るから予想しやすい進路だ。
普段はパスロックを掛けてあるがティエリアにとっては何の意味もない。あっさりと解除してしまうだろうから、取り返しのつかないことになる前にとっ捕まえなければと足を速める。案の定、格納庫からミーティングルームへの道すがらにある外部通用口の前に立つティエリアを発見する。ヘルメットを左に抱えてパスコードを解除しているようだ。間に合ったとロックオンは大声を出した。
「おい! ティエリア!」
「なんですか」
「だからなんですか、じゃねえよ! 何やってるんだ!」
「何とは? 俺はハリケーンを観察しようと思っただけだ」
「この大馬鹿野郎! おやっさんの話を聞いてなかったのか!?」
馬鹿野郎としか言いようがなかったロックオンは、懲りずに外へ出て行こうとするティエリアの腕を掴んで引き戻し、ドア横に設置されてあるパネルに触れようとしていた細い指が空ぶる。邪魔をするなと憤慨して抗議するのを無視してまで連れて行こうとするが、これまた抵抗して暴れるものだから大騒ぎになってしまった。
何とか追いついたイアンのほか、騒ぎを聞きつけやってきたテクノスタッフが見守る中での離せ離さないの応酬(後ほどイアンに修羅場のようだったと揶揄された)が続き、とうとう面倒くせぇと叫んだロックオンは、ドアの開閉ボタンを引っぱたいた。
圧縮された空気が排出されてドアがスライドする。途端、ティエリアの身体を吹き飛ばすかというほどの空気が一気に押し寄せ、同時に身体に水が叩きつけられた。思わず顔を腕で覆ったが空気の勢いも水の量も変わらない。ものすごい轟音と押し寄せる空気に足を取られたところで後ろから肩を掴まれた。振り返り見上げると己と同じように頭から水を被ったロックオンが片手を壁について身を支えながら鋭い目でティエリアを見ている。
「……わかったか」
「……了解した」
「良し」
「良しじゃない! 何やっとるんだバカ共が!」
という怒声と共に解放されたままのドアが閉じられ、周囲に静寂がもどる。ティエリアが顔を覆っていた腕を下ろして見渡すと、同様に全身が濡れてしまったロックオンと、普段の温厚そうな顔を思い切りしかめたイアン・ヴァスティがドアの操作パネルの前にいる。ドア付近は天井、床、壁と全てが水浸しで、それどころか木の葉や枝などが散乱している。全く気が付かなかったが、空気と共に吹き込んできていたらしい。いつの間にか手放していたヘルメットを押し付けられ、とっとと着替えて来いと二人ともそろって追い払われた。お互い一言も会話はなく、そのままあてがわれた部屋へ向かう。
濡れてしまったパイロットスーツを脱ぐのに一苦労したが、シャワーを浴びて身を整え幾分かすっきりとした心地でミーティングルームに赴いた二人に対して、イアンは何も言わずにモップとバケツを指示した。
「……おやっさん……俺ぁプライマリのガキじゃぁねぇんだがな」
「だからこそ自主的にってやつだ。わしは道具を貸してやっているだけでね」
「……」
珍しく(本当に!)全く苦情を申し立てずに道具を手にしたティエリアの手前、いい大人がこれ以上愚痴をこぼすわけにも行かず、変わりに盛大なため息をついてから(これでも十分大人気なかったが)モップを担いで現場に向かった。
それでも大きな枝や葉などは拾って処分してくれていたらしく濡れた廊下を拭きあげることのみだったので、とりあえず片っ端からモップを動かしていったものの、やはりため息は出る。始めの「大人の態度」とやらは遠くに放り投げて、ロックオンはぼやいた。
「この歳で罰掃除かよ……」
「……」
「何とかいえって!」
もとはと言えばお前のせいだと噛み付くと、ティエリアはちらりと視線をむけて口を開いた。
「無駄口を叩いている間があれば手を動かせ。そうすれば早く終わる」
「……」
もはや何をも言う気になれず、黙々とモップを動かす。モップで拭き取るのみと言えど、これがかなりの広範囲であったために結局は1時間ほど利用しての作業となった。
「ま、お前さんにとってはハリケーンを体感できたうえに、言いつけを守らないとこういう目に合うことも学べてよかったじゃねえか」
「確かに貴重な体験だった。濡れるのはいい心地ではない。全く地上というものは」
まったくろくなことがない。早く宇宙へ帰りたいというティエリアに、嫌味のつもりで発した言葉だったのだが、嵐があければ今度は散歩に連れて行ってやろうかとロックオンは考えた。確かに地上は難儀かもしれない、だが嵐が連れてくるのはそれだけではないのだ。
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